#5 警笛とジェネシスの襲来
「なんでもブレン・ハザードって奴がしょっちゅう奴を訪ねててな」
「ブレン・ハザード……!」
アルはここぞとばかりに、かっと目を見開いた。
意外な食いつきに男はきょとんとしていた。
「ブレンについてなにか知ってる?」
「ん? そこのバーグと同じで『人造人間』の研究者とかで、元冒険者のよしみで俺もたまに飲んでたりしたな」
「どこにいるかとかは?」
「いやあ。故郷はジフォンだが、もっぱら拠点は──」
ぴぃーー!!!
「おおっと。なんだなんだ?」
警笛により会話を遮られた男が狼狽える。
そして4人の奏者が分担して吹くことで、警笛は実に1分間絶える事無く鳴り続ける。
奏者は広場に集まっていた者達で、頭巾を被って幕がかかった神輿を担いでいた。
「……祭りか?」
「だといいが、俺はそんなの知らん」
アルの質問に、他でもないリワン村在住である男が答えた。
往来が注目を集めている広場の者達が頭巾を取ると、あちこちでどよめきが起きる。
「ヤギの頭……あれが獣人か」
死骸を加工した飾りではなく、まばたきをして鼻孔を膨らませたりしている本物のヤギの頭を持った人型の生物であった。
それから獣人達はそれぞれ頷いて合図を送り、神輿にかかっていた幕を取り去った。
「ふっふっふ、ごーきげんよう。リワン村の諸君」
隠されていた神輿の上には、ぴかぴかのコートと軍帽を身に纏い、ぴかぴかの鞭を撫でる少女が座っていた。
アルを含み、群衆は再び別の意味でどよめく。
「うるさーい! 黙れ黙れー! ……よし、よーく聞くがいい」
ぴいぴいと叫ぶ少女の姿に同情した人間が大半であったが、静まり返った群衆へ少女の演説が始まった。
「我々は獣人を率いる組織、ジェネシスである。そして私は最高幹部がひとり、カンナ・モチヅキだ」
カンナが鞭を弾くと神輿の陰から新たにヤギの獣人が4体増える。
「さあ出てこい! ブレン・ハザード!」
「……!? 人造人間を操ってる組織が名指しだと?」
「もう逃げられんぞ。ジフォンまで辿り着けんよう、唯一の橋はすでに落としてきたからな!」
「はあ!?」
なるべく声を抑えるようにしていたアルだが、ジフォンに帰れなくなったと聞いて、つい驚愕の声を上げてしまった。
群衆とカンナの注目はアルに注がれる。
「ブレン・ハザードはもう亡くなっている。えーと、俺はジフォンに住んでて、そこで彼の最期を見届けたんだ」
「死んだだと? ならお前が『四竜征剣』を引き継いだのか」
「しっ、四竜征剣? さ、さあ、変な力なら適当な誰かにあげたって遺言でしたよ」
直感で危険を感じ取ったアルはその場を取り繕うが、仲間であるバーグの家まで処分するような連中には結局意味は無かった。
「いないならいないでいい。改良型の性能を試すか、いけ」
カンナに顎で指示され、神輿を担いでいない4体の獣人が広場から散開する。