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#4 獣人と人造人間の兆し

 リワン村に到着後、コトハは親戚の老夫婦の家までアルを連れて行った。


「初めまして、アリュウル・クローズと申します」

「よく来たね。狭いところだけど是非泊まっていって」

「ありがとうございます」


 コトハの祖父の妹とその夫である夫婦は、アルを泊めることを快諾した。

 馬車の料金といい、泊まる場所まで用意してもらったアルは深々と頭を下げて感謝する。


「えっと、ひとまず仕事だけ済ませてきます。コトハ、また後で」

「うん。気をつけてね」


 背負ってきた荷物を広げているコトハにそう告げて、アルは手紙の住所を目指す。

 宛名は『バーグ・ソドル』とあり、なんとなく屈強な男を想像していたが、思わぬ事態がアルを待ち構えていた。

 住所にあった家屋は焼け落ちて人の気配など一切無い。


「はー、いきなり出鼻をくじかれた……」


 周辺の住人に聞き込みをしたがほんの数日前に火事によって消失していたようで、幸い家の主は無事らしい。

 しかし、少なくとも村を出ていったのは確実で、親戚を訪ねたのかどうか、その行方はわからないとのこと。


「よう、アンタが噂の郵便屋かい」

「え? そうですけど」


 焼け落ちた家屋の前で立ち尽くしているアルに声をかけてくる男がいた。

 白髪交じりで鼻の赤いその男は、アルが聞き込みをしていることを嗅ぎつけたようだ。


「現場付近に出たっていう獣人(ビースト)のことは聞いたか?」

「獣人?」

「知らねえのか? 大陸の端っこで、大きな川に囲まれたジフォンはまだらしいが、この付近だとちらほらクエストの討伐対象で出てるらしいぜ」

「……少し詳しく聞きたい」


 アルがそう言うと、男の視線は近くの焼き鳥の屋台にちらちら移っている。


「はあ。食べたら思い出すか」

「わかってるな。話が早い」


 注文を終えた2人は屋台のベンチに腰掛けた。

 男の本性を察したアルは砕けた接し方になる。


「知っての通り、俺はただの郵便屋なんだ。獣人から教えてほしいんだけど」

「おう。獣人ってのはつまり、動物の頭をした人間だ」

「人間……ならクエストの対象になると、盗賊とかと同等の扱いか」

「いいや。俺が冒険者として現役だった頃たまたま見かけたが、特に討伐しても構わないってさ。害獣の扱いだ」


 男が説明を端折ったが、定義としては『人型の生物』が適していた。

 アルは質問を続ける。


「それであの火事はその獣人が関わってるんじゃないかって?」

「間違いない。ぐるぐる巻きの頭巾から見えた角、ヤギの獣人がひっそりと人間に紛れて計画に及んだんだ。動機もあるしな」

「動機? バーグ・ソドル……ご、ごほん。あの住人も冒険者だったのか?」


 情報通らしき男は把握している可能性はあったが、業務上の機密である氏名をごまかしながらアルは男に問いかける。


「元冒険者かつ、『人造人間』の研究をしていた男だ。そう、獣人のな」

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