#40 パーティ結成と新事実の判明
「ユンニを発つ日はもちろん、困ったことがあれば訪ねてくれ」
「まあ私も短い間はいろいろ助かったし、少しは手を貸してあげる。オルキトもね」
アルとオルキトはパーティとして独立することとなり、サジンにレーネが別れの挨拶をしてギルドへ移動しようとする。
「コトハ。悪いけどこれは任せた」
「あ、そうだった。ズルできなかったか」
「ちゃんと手順を踏め、って神様に言われてるんだな」
コトハには渡せずじまいでいる母親への手紙を返した。
「それじゃあ、また縁があればぜひ」
「じゃあなー」
大きく手を振るウジンにも手を振り返し、アルはパーティの背中を見届けた。
静かになった店内に戻るとテーブルを挟み、オルキトの真正面に座る。
「勝手にパーティを組むなんて言って申し訳なかった。ああしないと2人きりになれなかったからな」
「あの、さっきの話なんですけど……アルさんは優しいんですね。よく考えずとも、新しい門出を迎えるレーネさんには縁起の悪い話ですから」
「いいや。オルキトにも冒険者を続けてもらうつもりだ」
「ですが……」
「落ち着いて聞いてくれ。俺もジェネシスを知ってる」
アルの言葉に、オルキトの口元がほころんだが、すぐにきゅっとへの字になる。
「気休めじゃない。獣人を裏で操ってる組織だって知ってる」
「ど、どうして」
「結果的に俺が故郷を追われたのがソイツ等のせいだからだ」
「……ならレーネさんが見たというあの少女のことをご存知なのですか?」
アルは自信満々に答えた。
「カンナとアンナなら今頃、ネラガに向かってるよ」
「誰ですかそれ」
「カンナとアンナだって……」
「『ハンナ』、ではないんですか」
「は、はーんなー……?」
「あとネラガは僕の故郷なんですが、何があるんです?」
アルは一転して両手を胸の前で広げ、仕切り直す。
「お互いの情報を整理し直そう」
鞄から余っていた便箋を数枚取り出したアル。
「俺は3、4日前、レーネとコトハでクエストに出たんだ。そこでカンナ、アンナっていう双子と対峙した。神輿に乗って獣人に担がれてる、自称ジェネシスの最高幹部。ここまではいい?」
「ジェネシスを名乗って獣人を指揮する、神輿に乗った少女ですよね。ハンナも該当しますが……もう少し情報はありませんか。まだ新しい軍服を着ていたりだとか」
「そう! それだ! あ、いやごめん。勝手に盛り上がって」
わかりやすい特徴が一致し、アルはジェネシスの一員と断定した3名の名前を書き出した。
「うち2人は俺の事情でネラガに向かうように仕向けたんだが……安心してほしい。ユンニが今も栄えているのを見る限り、脅威にはならないはずだ」
「そうですね……ハンナが単純に増えただけとみなしていいなら」
「ハンナもそんなにアレ、なのか」
「僕が今もこうして無事ですし、何よりネラガには父や姉、先輩としてお世話になった冒険者の面々もいますから」
「それはよかった……いや、相変わらず俺は軽率な行動をして申し訳ない」
自らの安心のために選んだ方法であったが、オルキトに限らず何者かの故郷に押し付けてしまったこと、アルは見えないところで自らの身をつねってきちんと反省した。




