#39 射手と何でも屋のある共通点
「あー、レーネはこれからお世話になるパーティなんだからちゃんと挨拶しとけよ」
「雑! 適当に言ってない? い、いいんだよね?」
「ウジン、サジン、コトハ。いいか?」
いざとなってもぞもぞと緊張していたレーネに、初めに手を差し伸べたのはコトハ。
多くは言わず固い握手がパーティ結成の証になった。
ウジンはさりげなく会釈だけで終わっていた。
「レーネさん、よかったですね。……僕の分まで頑張ってください」
「……オルキト。私も話ぐらいは聞いてあげるけど」
「そういうつもりじゃなかったんですけど……」
「はいそうですか、で済ませたら気分悪いじゃない」
しんみりとした空気に耐え切れず、レーネはこつこつ指でテーブルを叩いて着席を促した。
「改めて、オルキトと申します。役割は射手」
「俺はアリュウル・クローズ。何でも屋のアルって呼んでくれ」
「何でも屋……ですか」
全員の自己紹介を聞いたうえで、オルキトは再度アルの方を不思議そうに見ていた。
「訳ありでこき使われてるだけだよ。俺ももうすぐ冒険者辞めて故郷のジフォンに帰らんとしてるところだ」
「あ、そうなんですか……」
「そんな俺だから言うんだけど、手に職つけてるのにそれでも冒険者を辞めるような事情があるのか?」
似たような事情を抱えているが、アルとオルキトでは職の有無という決定的な違いがある。
それを指摘されたオルキトは迷いながらもその重い口を開いた。
「クエストに行く先々で獣人に邪魔をされて、結果が出せないようになったんです」
「……噂には聞いていたけど、オルキトのことだったのか」
「兄さん。しっ」
アルに代わり、サジンが兄の発言をいさめる。
「僕は討伐クエストを中心に受けていたのですが、獣人を処理する手間もさることながら、それらに荒らされたであろう環境では標的が見つからないこともありました」
「そうなの? オルキトの仮説が正しいのなら、私達もついこの前、ツチオオカミを4日までかかって討伐したのもそのせいね」
「レーネさん達もそんなことが」
「ええ。獣人に、怪しい女の子まで見つけたわ」
オルキトは短く、えっ、と声を漏らした。
「もしかして……ジェネシスと名乗ってましたか?」
「なにそれ? 私にコトハは遠目で見てただけだから……アルはどう?」
緊張した面持ちのオルキトに迫られたアルだが、むしろ望むところであった。
「答える前に聞きたいことがある。オルキトは冒険者を辞めることに未練は無いのか?」
「それは……できるのなら続けたいです」
「わかった。それなら俺と2人でパーティを組まないか?」
アルの提案はオルキトだけでなく、その場の全員の目を丸くさせた。




