#3 幼なじみとリワン村への出張
正体不明の4本の剣、四竜征剣について、アルが1つだけわかったことがあった。
『ウェーブレイス』!!!
『ダースクウカ』!!!
「……そうか、初めて出す時にしか登場音は鳴らないらしいな」
ジフォンからリワン村までは、コトハが同行するため馬車を使わざるを得なかった。
そうなるとやかましい登場音はなんとかしておきたいと、アルは早朝、郊外の果ての果てで予め荷物として出しておくつもりであった。
しかし昨日呼び出した2本はやけにおとなしかったと油断していたところ、体を揺らすほどの騒音で吹き飛ばされかけた。
「『ウェーブレイス』、『ダースクウカ』。……やっぱり見分けがつくな」
比較的長身であったアルの一回りは大きい、コバルト色の大剣はウェーブレイス。
ブラックオパールのように虹色の光沢を持つ黒い刀身のレイピアはダースクウカ。
アルは初めて見たはずの剣の名前とその外見を何故か把握していた。
「なんか不気味だぜ。ま、コトハがやけに騒がないことが逆に救いか」
やがて時間は過ぎ、アルは馬車の待合所で荷物を背負ったコトハと合流する。
コトハの両親は気前よく、アルの分まで馬車の代金を出してくれていた。
「馬車なんて久し振りだ。いやー、らくちんらくちん」
「アル君は仕事だったのによかった? きっといつもよりはゆっくりのはずだけど」
コトハは馬車の外で行き来する、忙しそうな駿馬の蹄の音を聞いてアルにそう尋ねた。
そしてアルは昨日と同じ返事をする。
「平気だって。こう見えて俺は割と真面目だから交渉も上手くいった」
アルは余計な騒ぎを起こさぬよう、自称瀕死だったブレンのことは伏せ、手紙は落とし物だとして上司に報告をした。
そして交渉の末、リワン村には手紙を届けつつ、封筒には書かれていない差出人ブレンの住所を尋ねて返送ができないかなど調査する、として手紙の束を大事に受け取った。
「そうだね。アル君はそういう人だもん」
「特例だし、1日ぐらいなら遅れても仕方ないってさ。まあいざとなれば」
「いざとなれば?」
「馬車の中でも走ればいいさ」
「それは行儀が悪いよ」
「いや違う。そうじゃないんだ……」
冗談が嚙み合わないアルとコトハ、傍から聞いていて苦笑いした他の乗客を乗せた馬車はつり橋を越えてリワン村へと到着した。
※ウェーブレイス → 【大波 + 息吹】
宝石のようなコバルト色の、屈強な人間より一回りは大きい剣。
果てない大海の大波のような範囲攻撃に特化している。
※ダースクウカ → 【夕闇 + 角→くか】
光の当たり方により七色に光る刀身を持つレイピア。
目の利かない暗き闇からの不意の一撃を模すような、刺突に特化している。




