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#35 気になる証言と突然の連行

「最近、獣人を目撃したり、そういう話を人づてで聞いたりしてませんか」


 アルは4組の冒険者に聞き取りをしたが、有力な情報は得られないでいた。

 そもそも素材の引き渡しに来ているのでいずれもクエストは達成していて、いずれもアル達の一行が進めている依頼の森以外での討伐クエストだった。


「そういえば『獣人を引き寄せる射手』なら聞いたことがあるぜ」

「へえ。詳しく聞きたいですね」


 5人目の赤い革の鎧の槍使いから興味深い話題が出ると、揉み手まではいかないがアルはにこにこと笑ってその話を広げる。


「お前さんぐらいの歳の、駆け出しの冒険者らしい。えーと、ほらあそこに本人がいる。金髪の」

「あ、急いでましたか。お話ありがとうございました」


 悪いな、と短く断って槍使いは去っていき、アルも軽く会釈をする。

 有力な情報をもらったアルがギルドの奥のテーブルを見てみると、ひとり哀愁漂う背中をしていた金髪の青年が座っていた。


「あー、あの。すみません」


 アルが近寄って声をかけようとしたところ、逆に何者かに呼び止められた。

 カウンターにいる全員共通したデザインである上着の、ギルド職員の男だ。


「少し話、いいかな」

「すみません。いろいろ聞き込みしてたのが迷惑でしたか」

「苦情は特に無かったので構いません。ただ別の件で」


 ギルド2階は人が多いので1階まで降りて、さらに少し入り組んだ人の少ないところまで連れられる。


「昨日、ギルド内で郵便物の紛失事件が起きたのはご存知でしょうか」

「騒動が起きたのはそれとなく知ってますが、そういう事情でしたか」


 騒動の張本人はしらを切り、加えて男の発言に指摘もする。


「紛失なら、失礼ですがそちらの不手際では」

「現段階ではそうしていますが、盗難の可能性があるんですよ。なにしろ珍しいものだったので」

「……なんでしょうか」

「あなたも冷やかしに来ていたの証言があって、少し聴取をさせていただきたく。衛兵さん」

「……!?」


 男の合図で、建物の陰に隠れていた衛兵2人組がアルの退路を塞いだ。


「冷やかしに来てたのは200は超えてたんじゃ……全員にこれを?」

「独自の判断を設けています。お伝えはしませんが」


 真っ先に思い浮かんだのは何でも屋であること。

 ギルドカードは提示しなかったが、簡単な調査でもわかる。

 とは言ってもそれが何十人になればさすがに手間なのは間違いない。

 ある程度顔が知れ渡っている冒険者を除いたのだろうと、アルは妥当な予想をつけていた。


「武器は宿に置いてあるのか?」

「え? 何でも屋だから別に何も……」


 男は咳ばらいをして衛兵に指示を出した。

 そしてアルは宿屋を経由してから衛兵の詰所まで連行された。

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