#34 買取と獣人のレート
「お。アル、あの子達はどうなった?」
「ユンニの方に帰っていったよ。ここらの生まれなら俺よりも森のことは詳しいだろうし、それでも心配ならギルドの捜索クエストも目を通してみよう」
「そっか。それじゃあこれ。コトハもコイツに渡しちゃえ」
カンナ達が去っていくのを見届けたアルは、レーネとコトハからどさどさと獣人が残した灰が詰まった布の袋を渡される。
「掃除さぼったツケね。責任持ってギルドまで運ぶこと」
荷物を抱えたアルとその一行は森を進むが、目当てのものは見つからず出口まで出てしまった。
「ツチオオカミはどこにいったんだ。ひー、疲れた」
「足跡やマーキングは見つけたのに……」
討伐対象のツチオオカミだが、コトハがそれが生息している痕跡を見つけていたにも関わらず収穫が無かったのだ。
「とりあえず今日は荷物もあるから明日もう一度挑戦しよう」
「ああ、お願い……」
体力的に限界のアルはコトハの提案に賛成した。
獣人は討伐していてギルドによる買取を依頼したが、あまり利用価値の無い灰だということで5体分でようやく弁当代ぐらいになった。
灰では種族の区別もつかず、前のウシ獣人とレートも変わらない。
実績無く終わった1日は終わり、アル達は翌日もギルド前で待ち合わせて同じ森へ挑む。
「……なんで1頭もいない」
「こっちが聞きたいよ」
昼食のパンをかじるアルが尋ねると、レーネは不機嫌に答える。
数時間かけた捜索でもこれといった成果は出ず2人は焦っていた。
「ねえ、アル君。お願いしたいことがあるんだけど」
「お願い?」
「昨日の獣人騒ぎについて、ここに限らず目撃情報があるか他の冒険者とかに聞き取りしてほしい」
「アイツらの影響を疑ってるのか」
アルが依頼の意図を察すると、コトハはこくりと頷く。
「獣人が辺りの生物分布を荒らしてるかもって?」
「もしかしたらね」
「アル。それじゃあ任せたよ」
戦闘要員のレーネ、知識をもって現地で調査ができるコトハは必須のため、必然とアルがユンニまで戻ることになった。
冒険者が集まるとなると真っ先に浮かぶのはギルドであり、駆け足で向かう。
「誰から話しかけようか。見るからに手練れの冒険者は、と……」
特別な目的を持ってギルドの中を見渡すと、アルにはいろいろ興味深いものが目にとまる。
2人の人間が肩車でもしているかのような巨大な人間、全身真っ黒でマントを羽織った老人。
弓を携えた長身の女性に、そのそばを通り過ぎる、太腿かと見間違うほどの太い腕の青年。
「効率よく素材買取のカウンター付近で待とう」
確実に討伐を終えた冒険者に聞き取りができる方法を選んだアルだった。




