#26 ぴんとくるのが無い
「じゃあ適当に掲示板のを見てくか。気になったのを各自選んだら相談する」
「やっぱりさっきのは茶番なのね……」
「そうでもない。クエストを選ぶ目安は洗い出せたし」
クエストの依頼書が貼られる掲示板は、木の板がちょうど3つ組み合わさっていたのでアル、コトハ、レーネで手分けをして探すことになる。
「いくつかあったけど、似たようなものばっかりだった」
「そっちもか。はっきりとした特徴は無くて、これだ、ってぴんとくるのはな」
「……獣人は?」
「つい探してたけど無視だ無視。あの人はもう関係無し」
比較的空いていた区画だったのでアルとコトハは先に合流し、その具合はいまいちだったと簡単に報告し合った。
一方でレーネはやたら混んでいた区画に率先して向かっており、うろうろと人の間を縫って依頼書を見ている。
「なんか違いでもあるのか? やたらあの辺りは混んでるみたいだけど」
「うん。あそこに貼られてるのは最新の依頼書か、もしくは報酬が比較的高いものに限られてる」
「……俺達にはまだ縁が無いっぽいな」
集っていたのは物騒な武器を背負っていたり、年季の入った鎧を纏っていた、冒険者素人のアルでもわかるほどの手練れらしかった。
少女であるレーネは明らかに浮いていて、手練れ冒険者が静かに一瞥をくれる度、見ていたアルはむず痒くなる。
「あ、おーい。コトハ、アル」
「……一応聞いてやるか」
レーネに手招きされ、アルがへこへこしながら人ごみを割っていくと、まだ新しい依頼書を見せられた。
『ほうしゅう 99まん9999 レル』
「うわ、金額に知性を感じない」
なるべく声を抑えたつもりでいたのだが、アルは数人の冒険者がざわつくのを感じた。
クエストの内容も難易度という面でろくなものではないだろうと、ささっと依頼書を見てからレーネに指摘をしようとするが、何故か『何でも屋』であっても受注可能になっている。
そんなはずは無い、とやっきになっていたアルの目にようやく満たしていない条件が映った。
「あ、ほら。『ダースクウカを所持していること』ってさ」
「ダースクウカ? なにそれ?」
「剣士には常識らしいけど、四竜征剣っていう伝説の4本の剣のうちの……とぅえええ!? だ、だだだ、ダースクウカ!?」
アルは驚愕してレーネ以上の食いつきを示していて、改めて内容を指差しして確かめる。
「『ツノアリネズミ(幼年期)の討伐』……レーネ、この害獣って強いのか?」
「はあ? 冒険者の練習相手にもならない雑魚よ。私は学校で数えきれないほど相手にしたぐらい。なんでそっちは知らないの」
伝説級の武器を要求しておいて、駆け出し冒険者のレーネさえ鼻で笑う害獣の駆除というクエストの謎は、依頼書に珍しく公表されている依頼人を見てさらに深まっていく。
「依頼人、『ブレン・ハザード』……なぜに?」




