#25 スポット雇用と2人の茶番
昨日、決闘を申し込まれたのと同じテーブルにて、アル達は双子を抜いての打ち合わせを始める。
「誰かさんのせいで俺達のパーティの2人がけがをした」
「う……反省はしてる。なんだったらまだ全然謝るし……」
「全然とはなんだよ。まあ、本人達も許してるし、ユニオンも追い出されるっていう制裁も食らってるからそれ以上は追及しないでやる」
レーネは悔しかったが、小さくありがとうと呟く。
「それで私をパーティに入れてくれるけど、期間限定……だって?」
「2人が復帰するまでだ。けど詳しく言うと、その後どうなるかはレーネ次第だ」
「私次第?」
「クエストを通して俺やコトハがこのパーティにふさわしいと判断できれば、正式にパーティに迎えるかを検討する」
「ほ、ほんと?」
「そうならなかったら、優しいパーティに拾ってもらえるよう全力で願ってやる」
「野良猫みたいに言うな! ……けどとりあえずお願いします」
早速お行儀よく頭を下げたレーネ。
「コトハ。というわけで、ちゃんと俺が責任は持つ。だからしばらくはよろしく頼む」
「ううん。私もお願い聞いてもらってるから」
コトハはアルに帰郷を延期してもらっていて、その意見に特に反対はしていなかった。
「……あの時の、魔法使いが上位とかのは文言通りに受け取ってよかったんだよな?」
「気にはなってたから。そこにユニオンを追い出されたレーネが来て、迷ってた」
「そうか。偶然いい時に」
期せずしてコトハほかメンバーにとっても、レーネは良い関係が期待できる出会いとのことだった。
アル達は打ち合わせが終わると、クエストを受注するための掲示板まで移動する。
「アル君。クエストの内容に希望とかは?」
「別に任せるけど……なんてのはだめか。まずは簡単に採取系かな。ウジンから聞いた」
「報酬の希望とかあれば」
「平気。御存じの通り、金には困ってない」
「遠いところだと交通費は自己負担する場合がある」
「はー。浪費するのもなんだし、場所はユンニの近辺に絞るか」
レーネは動かない2人に掲示板を指して足踏みする。
「ジフォンからリワンまで自力で往復できてたよね」
「ああ。前の調査もだけど体力使うのでも平気だ」
「宿の融通は利くけど、活動は日中がいいよね」
「まあわざわざ夜に働くことは無いな」
「『薬師』か『魔法使い』の条件はどっちかに絞る?」
「選べるのが多いのがいいんじゃないか?」
「多すぎる場合があるから」
アルは、ひとまず目を通してみる、とやたら演技臭く返事した。
しばらく尺を取ったやり取りにレーネは呆れていた。
「……2人とも若干ふざけてない? 寸劇はいいから」




