#24 追放と帰郷の延期
「数日くらいなら思い切って休んでみれば? そもそも俺には役割はおろか、クエストの経験も無いぜ」
「アルにもできるくらいのクエストはちゃんと用意されてるよ」
「その言い方は違くない?」
「言葉足らずだったね……クエストは必ずしも腕っぷしの内容ではないってこと。実際、僕等もまだコトハが主導する採取系のものばっかり受けてる」
「薬師職が関係するやつ?」
「うん。冒険者として経験を積むためだけじゃなく、コトハの夢でもあるからね」
「……この流れは。……はあ、やっぱりか」
コトハの夢についての話題が出るとアルは直感が働き、辺りの様子を伺う。
するとやはり、これから話を遮るであろう魔法使い、歩み寄ってくるレーネの姿を発見した。
「またコトハに用か? なあ、決闘の約束はちゃんと書面で残したんだぞ」
「……違う。もう勧誘じゃない」
落ち込んでいた様子のレーネはまた、不自然な大荷物を背負っている。
「なんでもするからパーティに入れて」
「は? ユニオンはどうするんだ」
「……追い出された。他の冒険者とトラブルがあったのがすぐバレて……」
「俺達のことだな。え、なに。即日の退去なの?」
「実家が近くだろ、って……」
張り合いの無い返事に、気を抜けば荷物に押しつぶされそうなふらふらな足取りを見ると、レーネの言葉は信憑性が高い。
「組織としてはちゃんとしていたのね」
アルへ部屋を貸すため、片付けをしていたコトハがそう言いながら宿屋から出てくる。
「すまない。看病を買って出てくれて」
「ううん。今日は満室になるらしいし、アル君のことを考えたら、それも加味していい機会だったから」
コトハはけがしていたサジンの看病ということで部屋が空くので、そこにアルが泊まることになる。
つまり少なくとも今日1日だけはユンニに滞在することになる。
「コトハもクエストを頼みたいって?」
「うん。もう少しだけ、いいかな」
「……わかった。役に立つならいいけど」
コトハにまで引き留められ、結局即日の帰郷は叶わず延期されることとなった。
「あのー……私は?」
小さく挙手しているレーネの扱いは、本来のパーティに任せようとアルはコトハの方を見る。
「朝にも見た強力な魔法。『魔法使い』は上位職にあたるよ」
レーネの人間性はともかく魔法使いというのは貴重な人材だと、コトハは事実だけ口にする。
「ウジン達は? まあ、聞くまでもないか。勝手にいちゃもんつけられた被害者だもんな」
「……サジン、アルも少しいいかな」
ウジンに手招きされ、アルは小声で意外な返事を聞かされる。
「軽傷では済んだけど、今後付き合っていくとして僕はあまりいい印象ではない。ただ」
「ただ?」
「アルなら決闘の結果をもって多少は制御が効くと思う。それと別に、ユンニを出るまでの数日で助けになるのならアルに任せるよ」
バリアー・シーの存在を知られてしまったという縁もあり、迷った末にアルはまた翌朝ギルドで会う約束をした。




