表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/238

#24 追放と帰郷の延期

「数日くらいなら思い切って休んでみれば? そもそも俺には役割(ロール)はおろか、クエストの経験も無いぜ」

「アルにもできるくらいのクエストはちゃんと用意されてるよ」

「その言い方は違くない?」

「言葉足らずだったね……クエストは必ずしも腕っぷしの内容ではないってこと。実際、僕等もまだコトハが主導する採取系のものばっかり受けてる」

「薬師職が関係するやつ?」

「うん。冒険者として経験を積むためだけじゃなく、コトハの夢でもあるからね」

「……この流れは。……はあ、やっぱりか」


 コトハの夢についての話題が出るとアルは直感が働き、辺りの様子を伺う。

 するとやはり、これから話を遮るであろう魔法使い、歩み寄ってくるレーネの姿を発見した。


「またコトハに用か? なあ、決闘の約束はちゃんと書面で残したんだぞ」

「……違う。もう勧誘じゃない」


 落ち込んでいた様子のレーネはまた、不自然な大荷物を背負っている。


「なんでもするからパーティに入れて」

「は? ユニオンはどうするんだ」

「……追い出された。他の冒険者とトラブルがあったのがすぐバレて……」

「俺達のことだな。え、なに。即日の退去なの?」

「実家が近くだろ、って……」


 張り合いの無い返事に、気を抜けば荷物に押しつぶされそうなふらふらな足取りを見ると、レーネの言葉は信憑性が高い。


「組織としてはちゃんとしていたのね」


 アルへ部屋を貸すため、片付けをしていたコトハがそう言いながら宿屋から出てくる。


「すまない。看病を買って出てくれて」

「ううん。今日は満室になるらしいし、アル君のことを考えたら、それも加味していい機会だったから」


 コトハはけがしていたサジンの看病ということで部屋が空くので、そこにアルが泊まることになる。

 つまり少なくとも今日1日だけはユンニに滞在することになる。


「コトハもクエストを頼みたいって?」

「うん。もう少しだけ、いいかな」

「……わかった。役に立つならいいけど」


 コトハにまで引き留められ、結局即日の帰郷は叶わず延期されることとなった。


「あのー……私は?」


 小さく挙手しているレーネの扱いは、本来のパーティに任せようとアルはコトハの方を見る。


「朝にも見た強力な魔法。『魔法使い』は上位職にあたるよ」


 レーネの人間性はともかく魔法使いというのは貴重な人材だと、コトハは事実だけ口にする。


「ウジン達は? まあ、聞くまでもないか。勝手にいちゃもんつけられた被害者だもんな」

「……サジン、アルも少しいいかな」


 ウジンに手招きされ、アルは小声で意外な返事を聞かされる。


「軽傷では済んだけど、今後付き合っていくとして僕はあまりいい印象ではない。ただ」

「ただ?」

「アルなら決闘の結果をもって多少は制御が効くと思う。それと別に、ユンニを出るまでの数日で助けになるのならアルに任せるよ」


 バリアー・シーの存在を知られてしまったという縁もあり、迷った末にアルはまた翌朝ギルドで会う約束をした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ