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#22 アルとレーネの決闘

「婚約!? コトハと……何でも屋のこの男が!?」


 ギルド内の喧騒に関わらず、レーネはしっかりとその言葉を聞き取り、ずかずかとアルに詰め寄る。

 そして乱暴に胸ぐらを掴んだ。


「い、いったいどういうことなの!? どういう弱みを握った? 私にも教えて!」

「落ち着け! 最後は変な欲望が漏れてたぞ!」

「うううー……こうなったら決闘よ! コトハをかけて私と勝負!」

「なんか因縁の付け方が強引過ぎる……コトハはなんて言ってる?」

「また寝ちゃったもん!」


 大声で騒ぐレーネをよそにコトハはまた眠りについていた。

 騒ぎを聞きつけて冒険者がぞろぞろとアル達の周りに集まり出して、まともに話をできる状況ではなくなり、場所を移すことになった。

 寝ていたコトハはサジンが運び、一行は馬車の待合所が遠くに見える平原に到着する。


「絶対に決闘! ……私だって、その方が踏ん切りがつく」


 レーネはすっかりやる気になって、杖をぐっと握ってアルへと突きつけている。


「大変なことになったね……」

「誰のせいだよ、特に妹! けどいいや、まだ策はある」

「でもアルはもちろん、僕等だって今は武器を持ち合わせていないよ」

「だからいい。闘うつもりなんて無いから」

「あ、そういうことか」


 アルは、そもそも決闘を成立させないようにする考えをウジンと打ち合わせた。


「レーネ。この通り、俺は武器を持ってないんだ。かっとなったのはわかるけど無駄な争いは止めよう」

「鑑定眼発動。……『バリア―・シー』? 剣はよく知らないけど持ってるじゃん」

「待った、今なんか見たな?」


『バリア―・シー』!!!


「どはぁ!?」

「んー……むにゃ……?」

「くっ、初登場のふざけた音量の演出は続投なのか」

「ここどこ……?」


 アルが怒りさえ覚える騒音は意図せずコトハを目覚めさせた。

 きょろきょろしているコトハを目の端に見ながら、アルは手にした得物の様子を確かめる。

 黄色い両刃の刀身、中央には赤い線がマーキングがされた、肘から手首ぐらいのサイズのショートソードであった。


「『バリアー・シー』……そういう能力か。おーい、レーネ」

「なにかしら?」

「俺がその帽子を取ったらそれで終わりでいいか。もしかしてできない?」

「ふん、いいわ。魔法使いがそれまで接近されるなんてありえない。こっちだって『参った』って言われるまでなんでもするけどいいのね?」

「決まりだな」


『バーウ・ミール』!!!


「またなにかの騒音でかく乱を狙って……え?」

「アルが消えた? 隠れる場所も無いのに……」


 奥義の音声が鳴ると同時に、対峙していたレーネのみならず後方から様子を見ていたウジンはアルの姿を見失った。

 コトハにサジンも同様に、互いの顔を見たりしては平原にいたはずのアルの姿を探している。


「で、出てきなさい!」


 レーネはわかりやすく動揺を表し、手あたり次第に爆発する光の玉を杖から放つ。


「まずい! 2人とも下がってて……うああ!」

「兄さん! わわっ!」


 流れ弾は外野にも向かい、コトハを庇って被弾したウジン達兄妹は悲鳴をあげた。


「お、おい! ちゃんと周りを見ろって、今すぐ止めろ」

「ひいい! なになに!? どこから声が? あっ、帽子が……」

「杖も没収だ。ほら」


 レーネの帽子に杖は、アルの声を口にする見えない何かによって奪い去られていってしまった。

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