#20 アルとコトハの関係
口先の交渉はこれ以上通じないし、逆上してレーネが手荒な真似をすればコトハはますます不信感を抱くため、アルはもうすっかり安心して2人を見ていられた。
「コトハ、ならせめてどんな夢かを聞かせて? その、これは私の個人的なお願いだから……」
「……」
「あうぅ、わかった。さすがにさっきの話があったらそんな反応だよね……」
「……すぅ、すぅ」
「あのー、寝てない?」
コトハは気を許さないまま無言でいたかと思いきやその逆で、面倒ごとが済んだため穏やかに寝息を立てて寝てしまっていた。
アルはまだ聞けずじまいでいたコトハの夢を知ることができるかと期待したが、いずれにせよジフォンの実家で母親を訪ねてみればわかるだろう、とレーネほど必死ではなかった。
そうしてレーネが去らないものかと待っていると横からサジンが指でつついてきた。
「……宿屋のこと」
「ん?」
「レーネが騒がないように、部屋を共有してるのは適当にごまかして」
「ああ、それは解決したから大丈夫。あと、俺はジフォンに帰るから大丈夫だ」
「解決した? それにジフォン、故郷に帰るなんて……はっ! コトハの親御さんに……その、アレか」
「え、よくわかったな。コトハに頼まれたんだ」
「いやいや、世間じゃ常識だって……」
「常識ってなぁ。まあいろいろおごってもらったし、そのお返しだ」
「うん、冗談だとはわかるけど、まるでお金を取るみたいな言い方だな」
「いや当たり前だろ……あれ?」
アルは複雑な表情をしているサジンに戸惑っていると、ふと別の視線を感じた。
「アリュウル・クローズだっけ? コトハ待っててギルドにはほぼ毎日来てるつもりだけど……役割を聞いてもいい?」
「別にロールなんて無い。というか、冒険者も今日限りで辞める」
「な、なにそれ、冒険者じゃないの?」
コトハが選んだ冒険者、アルに興味を持ったレーネは素性を尋ねたのだが思ってもいない回答に困惑していて、それはウジンもであった。
「アル、それはどういうことだい?」
「急な話で申し訳ない。臨時収入……じゃなくて、ジフォンに帰る分の資金が溜まってだな」
「故郷に帰るのか。うーん、アルが望んだことなら無理に止めないが、もう少し僕達にも考える時間を……ん? どうしたんだサジン」
可能な限り互いに納得できる別れ方をしようと食い下がるウジン。
するとサジンから耳打ちをされ、アルとコトハを見た後で小さくレーネの名前を交わし合い、何かに納得したように大きくうなずいた。
「レーネ。パーティとして場所を改めたいからここは失礼する」