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#19 勧誘とコトハの答え

「コトハ、この人は?」

「キキリンっていう魔法使い」

「見た感じだと何度かパーティに勧誘されてるのか」


 アルがざっとコトハやウジンの様子を見るに、勧誘は誠実で熱心なもの、というのではないと察せられた。


「向こうにテーブルがあるからさ。キキリン、だっけ。話をさせてくれないか?」

「……私はレーネって言うんだけど」

「申し訳ない。……おい、コトハ。人にはやっちゃいけないことがあるんだぞ」

「あなたこそ誰? このウジンとサジンとは別のメンバー?」

「俺はアリュウル・クローズ。……最近パーティを組ませてもらった」


 現時点の立場での自己紹介を終え、アル達はテーブルに着いて話を仕切り直す。


「コトハ。今日こそ私達のユニオンに入って。特典もつけるわ」

「断る」

「なっ……まだ話も聞いていないのに」

「断る」

「ちゃんと内容を聞いて返事をしてよ!」


 コトハとレーネが揉めている脇で、アルは気になっていることをウジンに尋ねる。


「なあ、ユニオンってなんだ? パーティとは違うのか」

「ユニオンは冒険者のパーティがいくつも集まってできた組織のことで、経験や能力に基づいて所属する冒険者の編成を指示して、効率よくクエストをこなせる仕組みさ」

「それにコトハが勧誘されてるのか。名誉なことじゃないのか?」

「……そうでもない。彼女はまだ駆け出しの冒険者で、身内の縁で入っているらしい。コトハも個人的な事情で誘っているんだ」

「言われてみれば装備もぴかぴかだな。手入れが丁寧という意味じゃなくて」

「駆け出しの冒険者にとっては手っ取り早く実績を得られるけど、ユニオンに入るのはデメリットもある。……特にレーネのユニオンはね」


 なにかを含んだ言い方をされ、ちらっとアルがレーネを見た時であった。


「なにか? 下品な男が、じろじろこっちを見ないで」

「え?」

「私達『サンクチュアリ』には男は相応しくない。ねえ、コトハだって安心してクエストに挑むことができるのよ」


 レーネからの辛辣な一言に、アルはコトハに助けを求めたがお手上げといった風に首を横に振るだけであった。

 アルにはレーネが有能な冒険者を強引に引き抜くことも気分が悪かったが、それに加えて女性だけに絞っていることも傲慢さを感じて不愉快であった。

 だが、コトハが勧誘を断る理由は他にもあった。


「最初に言った通り、私には夢がある。組織としての方針があるユニオンではその自由が奪われるから、これ以上の勧誘は意味が無い」

「……なら約束する。私は下っ端だけど、組織として夢への援助を掛け合ってみるから」

「関係を作るつもりなら無駄。いつかパーティを抜けてしまう可能性があっても、ウジン達はそれをきちんと理解してくれた」


 冒険者としての処世術を学んでいたコトハは、援助などと恩に着せて対価としてユニオンは、長きに渡ってその自由を奪うであろうことを見抜いていた。

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