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#17 警告と裏の竜

「四竜征剣を手にする資格を持っていたのはいいが……」


 アルはブレンのつま先を踏みつける。

 手を握るほど密着していたので当然反応できなかった。


「ぎゃあっ!」

「おら、離せ」


 それからアルはブレンを肘で突いて押しのける。


「アル君、もしかしてこの人が?」

「ああ、今のこの事態を招いた張本人だ」


 ブレンに対し、警戒する様子を見せるコトハ、変わらず敵意を向けているアル。


「さて、リワン村で四竜征剣の噂を聞いて、それからユンニにまで手を広げてみるとまさかキミが冒険者になっているとはね。……いや、迷惑をかけてしまってすまない」

「どの口が言うんだか……それで、アンタは何者だ。人造人間とジェネシス、それらとどういう関係にある」


 問い詰められたブレンは黙って懐から札束を出してテーブルに出す。


「船でジフォンまで戻るぐらいは余裕である」

「どういうことだよ」

「今までのお詫びとお礼だ。これで冒険者をやめればもう関係の無い話になる……今ならまだ間に合うんだ」

「知ることすらも危険だって言うのか」

「あいにく、私はこれ以上守る人間は増やせない」


 今以上に関係を作らないようにしているブレンの態度、その意味を感じたアルは、背中を押す一言がかけられる。


「落ち着いて、アル君。今までの目的が果たせるんだよ。それはこの瞬間しか無い」

「……そうだな。コトハ」


 コトハの一言によって、アルは余計な雑念、正義感を押し殺す。


「もらってた手紙にー、剣はどう返せばいい?」

「私に任せてくれ。一応お守りは渡しておくから、それと交換だ」

「……! また……別の剣らしいな」

「裏の四竜。その一角だ。マイナーなものだから、事故に巻き込まれるリスクは小さい」


 アルはブレンへ、鞄から取り出した手紙の束をそっくりそのまま手渡し、四竜征剣は握った手を通して、詳しくは説明されず別の力と交換された。


「ここの支払いも私がもつ。最後に、ユンニにはもう近づかない方がキミのためだ」

「ああ、言われなくてもな」

「迷惑をかけた。手紙もありがとう」


 荷物を受け取ったブレンは足早に店を後にした。

 フードを深く被ってその表情は見せず、一般人に紛れて目立たないことに徹しているようであった。


「へっくしゅ!」

「っつ、びっくりしたぁ」

「あ、ごめん。我慢してたんだけど」


 おしとやかなコトハのくしゃみでその場のシリアスさは壊れる。

 鼻を擦っている様子を見たアルは自然と笑っていた。


「よし、臨時収入だ。じゃんじゃん頼もうぜ」

「そういう思いつきはよくないと思うけど」

「大金持ってると落ち着かないんだよ。だから食べ物にかえるんだ。もちろん船の分はきちんと取っておくから平気平気」


 その日は反省会のつもりでいたアルだが、思いがけずジフォン帰還への悲願達成の打ち上げとなったのであった。

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