#162 火遊びと精霊の庭
「あ、屋敷に帰ってきた」
「うん、そうだな」
『光る人影』についてツバキに尋ねに行ったアル──そのあとを一定の距離を保って追跡していたレーネとサジンは物陰に隠れながら様子を伺う。
「さ、このまま監視し続けてれば、いずれオルキトと合流するでしょう」
「うーん……」
件の騒動をアルとオルキトのいたずらと睨んでいるレーネだったが、一方でサジンはその言い分に同調しつつもアルと会話を交わした限りでは、関与しているかと言われれば違和感があった。
2人が監視を続けているといよいよ対象に動きがあって、緊張が走る。
「おおい、ツバキさんや。聞きたいことがあるんだけど」
「……えっと」
「なにアイツ。ツバキに話しかけてるの?」
「みたいだ」
◇
「あっ、ちょっと待てって」
ネラガと屋敷の事情に精通している、そんなツバキにアルが話を聞こうとしたところ、ツバキは走り出して建物の陰に逃げていく。
「なんだ? アイツに怖いものなんて無いはずなんだけど……」
オルキトの根回しがまさかツバキにまで及んでいるなど考えられなかったが、アルはとにかく後を追った。
追いかけっこはしばらく続き、何度目かに建物の陰を覗いたところでようやくツバキはうんざりした顔でアルを待ち構えていた。
「アンタ、尾行けられてるわよ」
「え?」
「ったく」
ツバキは短くそれだけを口にすると、今までアルが追いかけてきた道のりを逆走していき──
「きゃっ!」
「うわっ、大丈夫かレーネ」
◇
「なるほど。まだ俺を疑ってるのか」
ツバキによって尾行を暴かれたレーネ達は観念して、その目的を明かした。
呆れて肩をすくめているアルに対して、レーネはまだ食い下がる。
「それはそうと、ツバキに話しかけてたのはなんなのよ」
「あー、見てたのか」
「まさかツバキが詳しい事情を知ってる、なんて言わないでしょうね?」
「……なんでその鋭さをもっと適切な場面で使えないかね」
「はあ?」
普通の犬を装っているツバキの正体に迫りそうになっていたレーネだったのだが、その彼女を上手く扱える自信がアルには無かった。
まして、下手に動いてしまえばツバキの機嫌を損ねて『光る人影』の真相を知ることはできないので、やや強引に話を切り替える。
「それは置いといて、だ。さっきの『光る人影』だったな。実はもしかしたら、っていう心当たりはある」
「そうなのか?」
「ああ。『光る人影』だ。昨日の夕方ぐらいにレストラン街あたりで見かけたっていうアレについて。『光る人影』だよ」
改めて情報を整理する口調を不自然に感じながらも、冗談にしては堂々としていたアルの様子にサジンは特に指摘はしなかった。
「じゃあ得意の腹話術でいくかな」
言いながらアルはツバキのそばにしゃがむ。
「できるかなー、ツバキさん」
「……」
「ごほんごほん。調子が悪いな。もう一回挑戦させてくれ」
ぱちぱちと目配せをして協力を仰ぐアル。
心底嫌そうな顔をしながらツバキは、観念して口を開いた。
「コレルのことね」
「……コレルって誰だ?」
「いやアルが言ったんじゃん」
「え、今ツバキが喋ってなかったか?」
腹話術の設定も忘れてアルは普通の口調で質問を返し、2度目になる腹話術の披露、もといツバキの会話に違和感を抱いていないレーネ。
辛うじてサジンは不審な目でツバキを見つめたが、やがてその場の雰囲気に流されてアルのかくし芸に舌を巻いた。
「バルオーガの妻よ」
「はいこれは設定で、やや口が悪くなってまーす。んーと、バルオーガさんの奥さんって、それはつまり──」
少し考えて、アルは他の呼び方で尋ねる。
「オルキトとお姉さんの母親?」
ツバキに無言で首肯され、アルだけでなくサジンにレーネも未だコレルに挨拶ができていないことを思い出した。
「確かクエストで不在と言われていたが、最近帰ってきていたということか」
「らしいな」
「『らしいな』って、アルがそれを言い出したんだろう?」
サジンに指摘され、逃げるようにアルは話題を変える。
「でも屋敷にそういう気配は無いんだけど、なにか事情があるのか?」
「『精霊の庭』」
「……それがどうした?」
アルが問うも、会話をするリスクを避けるためツバキはそれきり黙ってそっぽをむいてしまった。
「そこに行けば会えるかもな」
「あ、そうだサジン、見てて。鑑定眼はつど──」
唐突に発せられた大道芸の合図に慌ててツバキは、レーネと軽くじゃれ合った後、いつもより強めにアルを蹴り倒してとっととその場を走り去っていった。
◇
「そういえば知ってるわよ。最近火遊びしてるそうじゃない」
「ふん。別にいいだろうが」
アル達は地図を持ったサジンを先頭に街を歩いていて、後ろに並んでいた2人が雑談を始めた。
火遊び。
その言葉は冒険者としては、世間一般に通じている意味とは別のものがあった。
『まあタイニィライトの点火訓練のことだろうな。タイミング的にも』
発火能力の覚醒──それは冒険者として初心者を脱したとみなされる基準として浸透している。
そのため能力を完全に使いこなせないでいる者は、「まるで火遊びをしている」という具合にからかわれるのだ。
実際サジンもその経験があり、小耳に挟んだその会話に対して微笑ましさを感じていた。
「人目が無い屋内でできれば集中できるのにな」
「アンタ仮にも他人の家で図々しいこと言うわね。オルキトのところ以外でも言えんの?」
「だからさ、それ専用の施設でもありゃいいんだけど……1時間で何レルとか。あはは」
「だめだめ。私達にはいいけど、世間的には隠しておかなきゃいけないことなんだから」
「あー、じゃあ薄暗い路地裏に作るんだよ。そうそう、子供も近づかないだろ? 前1回あったんだよ。『何してるの』って聞かれて咄嗟に逃げ出したぞ」
「ああ、それ? 前にオルフィアさんから聞いたけどね。飴とかあげれば割とどっか行ってくれるんだって。私はもういいけど、アルにはいい助言じゃない? ふふん」
「お姉さんがねえ……まあ火遊びをしてた時期もあったか。当然だろうけど」
『どっちだ──』
先頭に立っており、2人からは見えないところでサジンは苦悶の表情を浮かべていた。
『いや、『発火能力については冒険者に限って明かされている』というのを含めて紛らわしい表現は多いが、アルはともかくレーネやオルフィアさんがそんな……フケツなことはしないはずだ。……いや、決めつけもよくない。意外と2人とも恋多き女という可能性だってある……』
サジンはひとしきり悩むが、つい先日のこと身をもって得た教訓を思い出す。
『また勘違いをしてアルを呆れさせたらだめだ。……はっ、そうだ。こんなフケツな会話を人前で堂々とするわけない。よってこれは、タイニィライトに関する会話で間違いない』
むふぅ、と勝ち誇った鼻息をしていたサジンだったが、それも束の間だった。
「なあサジン」
「ハイナンデスカ!」
「うお、びっくりした……」
アルに声をかけられてサジンが立ち止まると、動揺していたのを不審がられてはいたが追及されず、そのまま近くのスイーツ店を指差された。
「そういえば手土産くらい用意しとかないと、って思ってさ」
「あ、ああ、そうだったな」
◇
「わー、美味しそう。ね、帰りは私達用に買ってかない?」
「本来の目的は忘れないように、だぞ」
「……はーい」
「今度はコトハにニコルも誘ってみよう」
「あ、いいねそれ!」
サジン達はそんなやり取りをしつつ、ショーケースの中から適当な洋菓子を見繕っていく。
そして手土産の提案をした本人のアルはというと、2人に任せきりでいた。
『でも店内には入るんだな……ん?』
手土産とは別に商品を見ているのかと、ふとアルの様子を見たサジンはしばらくして、その目の動きがどうやら並んでいる菓子類ではなく、動いているものを追っているのだと気づく。
『まただ。何故かお客さんの左手に注目してる──はっ!』
瞬間、サジンの頭に電撃のように直感が働き、除外し損ねていた想定が浮かんだ。
『勘違いをするのはなにも私だけじゃない。そう、『アルはともかく』と軽んじていたが、実は核心を突いてて、この場合はレーネが本来の話をしていたのに対して、アルがソッチの話をしていたんだ。奇跡的に噛み合ってしまった──』
手の施しようが無い結論に至ってしまいサジンは唇を噛んで悩む。
『なんとかレーネに気づかれないようにアルの間違いを正さなくては……』
「はー……いよいよと思うと緊張してきた」
「ど、どど、どうかしたか?」
「え? いや──」
既に危うかったが平静を装いながらレーネに向き合う。
「コレルさん、どんな人なんだろうね。オルフィアさんみたいに上品で優しい人だといいな」
「なに? 期待していいの?」
「──おい。少し話いいか」
冗談めかして笑っていたアルを見るやいなや、躊躇うことなくサジンは事情を伺うことにして──なんやかんやで逆に叱られることになった。
「なあ昨日の今日だぞ、なあ」
「……はい。反省してます」
「よし、次にやらかしたら罰にするか。それなら慎重に行動するだろ」
すっかり肩を落としてしおらしくなっているサジンを前にしてアルは、前の仕返しとばかりに一手を繰り出す。
「俺とデートする」
「ああ、わかったよ」
「……デートだよ?」
「む。昨日の今日だって指摘されたばっかなのに、今さっきのことでまんまと引っかかるとでも思ってるのか」
「ああ、そうだね」
デートというだけでも勇気を要したのに、それ以上踏み込むのはアルには叶わなかった。
◇
「あれ……だな。見えてきた」
「へー、綺麗なところね」
サジンが指差した先には小高い丘があり、頂上には木々に囲まれた温室らしき施設が目に入る。
そして丘を囲む柵を周っていくうちに見つけた入り口らしき場所にはアーチがあって、花で装飾されていたそれはよく手入れが施されていてレーネはくぐった後も名残惜しそうに見つめていた。
歩を進めていくにつれ緑が深くなり、木漏れ日の程よい明るさの中にあって初めにソレに気が付いたのはアルだった。
「なんだアレ」
距離があったのでおおよそになるが握り拳ほどの球体が、ぼんやりと光を放って宙を漂っていた。
同行していた2人を呼び止めてそれを指差して示す。
「おお、聞いたことはあるがアレは精霊だな」
「『精霊の庭』……なるほどね」
「うん。名付けられた通りにここは精霊の住まう庭ということか」
サジンにより精霊という存在を、その名前と姿を結び付けて理解したアルは自然と1つの考えがよぎる。
「『光る人影』の正体はこういうことか」
「精霊を見間違えた、ってこと?」
「そうそう。現にほら、アレを見てみろ」
またもいの一番に何かを発見したアルは少し駆け足になって森を抜け、日当たりのいい開けた場所にあったガーデンチェアに集っている光球の塊を見て苦笑してみせた。
「人1人分はあるな。その集団がふらふらしてたとかだろ」
「はー、驚かして、もう!」
「おいおい……危なくないか?」
「大丈夫だ。精霊は基本おとなしい」
精霊はサジンだけでなくレーネにとっても珍しかったようで好奇心で、光の塊に近づいていく。
アルは未知の存在におろおろしていたが、サジンの補足を聞いて数歩距離を取りつつレーネについていった。
◇
アルはガーデンチェアまで来ると群がっていた精霊達を観察してみる。
それとなく想像していた虫の群れのように蠢く不気味さは無く、一定の間隔で静かに光を放つそれらの神秘さに気持ち前のめりになっていた。
レーネもどこかから調達した雑草を猫じゃらしのようにしてそれらと戯れている。
「ん? どうかした? サジン」
「私? なにがだ?」
「誰かの声が聞こえたと思ったんだけど……もしかしてアル?」
不意にレーネは周囲を気にし出し、すぐ隣のサジンに限らず後方のアルにも声をかけるが、そんなちょっかいはかけていないと否定された。
「精霊が鳴いたんだろ」
「いやそんなはずは無い──」
精霊に声帯は備わっていない、と続けようとしたところでそれは第三者の声に遮られた。
「んー、いけないわ。寝ちゃってた……」
精霊の群れ、ではなくガーデンチェアに横たわっていた光の塊がむくりと起き上がった。
「あ……ら?」
光り輝いていたので体の凹凸も表情もわからなかったが、確かにレーネはその人間と目が合った。
「「きゃああー!」」
2人の悲鳴がこだまするとすぐに精霊達に異変が生じた。
自身の主に迫る危機を排除せんと、輝きは淡く白かったものから赤黒いものになり、高速で回転しながらレーネを突き飛ばした。
「レーネ!?」
「っつ、アル! 危ない!」
精霊は大声で叫んだアルにも狙いを定め突撃をしようとし、その直前でサジンが身を挺して庇う。
「ぐっ……」
踏ん張って耐えるサジンになおも同胞達の追撃が加わる。
「大丈夫かサジン!?」
「あっ、だめだめ! この子達は臆病だからじっとしてれば落ち着くわ!」
光っている人影の指示に従ってアルは、口を結んで地面に伏せる。
しばらくすると刺すような目の刺激がだんだんと収まって、そこでようやく安堵の息をつけた。
「あの、ごめんなさい。この子達、私が驚いたことがきっかけで興奮しちゃったみたいで……」
「そうなんですか……ちなみにー、なんですけど。俺達、ここにコレルさんを訪ねにきたのですが……」
「私を? はっ、やだ、寝起きでごめんなさい」
慌てて手ぐしで髪を整えていた光り輝く人影──その女性こそバルオーガの妻でありオルキト姉弟の母、精霊召喚師、コレルであった。
「あははは!」
「なにごと!?」
立て続けの未知との遭遇があったかと思えば今度は、サジンがいたはずの場所から高らかな笑い声があがった。
それは確かにサジンのものであったのだが、アルは断定できないでいる。
というのも、そこにあったのは精霊が群がってまるで巨大なブドウの房のようになったもので、激昂した精霊の色も相まってますますそれにしか見えなかった。
声の主を打倒せんと激しく蠢いていたその物体だったが、やがて根負けしたのか穏やかな光に戻りながら散り散りに空中へ去っていく。
「精霊って人懐っこいんだな。えへへ」
「……そう思ってるのはサジンだけだぞ」
改めて姿を現したサジンは口角を緩めて笑っていて、それはまるで子犬とじゃれた後かのように見えたのだが、すぐそばには精霊とじゃれあった末のレーネの姿があり、ユンニの騎士の異常な頑丈さをアルは再認識していた。
◇
「じゃあ改めて、『碧の原点』のコレルです。フィアちゃんにルーくんがお世話になってます」
我が子のオルフィアとオルキトの愛称で呼びながら、コレルは頭を下げた。
アルは期待はしていなかったがコレルはその間もずっと光り輝いたままの姿でいて、呆気に取られていて返事が遅れる。
「オルキトとパーティを組んでいるサジンです。こちらこそいつもお世話になっています。ほら、アルも」
「あ、ああ。……アリュウル・クローズって言います。最近冒険者になったばかりで今はここで新人として所属してます。アルって呼んでください」
正確には冒険者として『星の冒険者』に属していない、という辺りの説明をするのは手間がかかるので、ざっくりとした自己紹介を終えた。
『もう早くこの場から去りたい』
アルの本心はそれで、話題が広がらないように淡白な応対を心がける。
「でー……こちらはレーネです」
「うう……ごめんなさい。うちの子達が」
気絶したレーネはコレルと入れ替わってガーデンチェアに横になっていて、けがの程度も精霊の攻撃というよりもコレルに驚いて転んだのが主な原因で、軽く頭をうったぐらいで深刻なものではなかった。
「レーネさん、サジンさんに、アル君か。じゃあルーくんに、アル―くんだね」
『え、つまんな』
コレルの冗句に苦笑を漏らすアル。
と、その背に這うような悪寒が走って、ばっと振り返った。
──主様の冗句を無視か?
赤黒いまでには至らないが淡く朱に染まりつつあった精霊達から、そんな声が聞こえた気がした。
アルは慌てて取り繕う。
「あは、あはは、こりゃまたもー」
「そうだそれよりもこれ。つまらないものですが」
精霊達の無言の脅迫を無視して手土産を渡したサジン。
その全身を今度は角のような部位でざくざくと突く精霊だったが、また戯れとしてあしらわれた。
「わあ、美味しそうなケーキ。私も昨日買ってきたのがあるから、一緒にお茶にしない? ルーくんのこととか聞きたいし」
「昨日……? もしかして夕方ぐらい、レストラン街ですか?」
サジンが『光る人影』の正体の答え合わせをすると、ソレは耳打ちするような身振りをする。
「どうしても我慢できなくてちょっとね。フィアちゃんもルーくんも外をうろうろするな、って、ねえ。2人ともいつも口うるさく言うもん。……まあちょっと目立つのは自覚してるけど」
『だいぶだよ』
言いかけた言葉を唇の隙間から漏らさぬようにぐっと飲み込んだアルは、なるべく自然を装って体の向きを変えその場を去る体勢になる。
「用事は挨拶だけだったので、俺はこれで失礼します」
「あ、遠慮はしなくてもいいのに……」
落ち込んだのか、心なしか輝きが衰えたように見えて罪悪感を抱いたアルだったが、へこへこと腰を低くしながら歩を進める。
──主様の厚意を無下にするな
──主様を悲しませるな
がしかし、主に忠実な精霊達によって退路を断たれてしまい、そこでアルはその主に直接交渉を持ちかける。
「この精霊達って隔離とかできないんですか。いえその、落ち着いて話がしたいな、という意味で」
「ええ、専用のかごはあるけどあの建物の中だけは自由にしないといけないの。初めに交わした契約に則ってね」
丘に上がる前から見えていた温室のような建物を指したコレルは、契約についても説明する。
「精霊召喚師として精霊を使役するにあたっての約束事で、力を貸してもらう代わりに餌をあげるのが基本だけど中には気難しい子もいて、かごに入らなくてもいい場所を与える必要があったの。かと言って自由にしておくと……そのー、ね。さっきみたいな事故が起きかねない」
顔は見えないのだが、アルは不思議と目を逸らされる感覚が確かにあった。
「そこで考えたのがあの『家』。精霊の生息する環境を再現しながらも隔離する。つまりは大きくしたかごっていうことなんだ」
「……なら外で。ちょうどいい天気ですし」
わざわざ猛獣と同じかごに入っていくという愚かな行為を避けるため、アルは青空の下で話をしようと持ちかけるが天は味方をしてくれなかった。
やや雲行きが怪しくなったかと思う暇も無く、ざざっと通り雨が降ってくる。
「わわ、案内するからついてきて。レーネさんは精霊に運ばせるから」
『よし。尊き犠牲としよう』
コレルの注意が逸れて精霊の大半がレーネの運搬に回された隙に、アルはその真逆の方向へ走っていく。
「おい、どこにいくんだよ」
しかし純粋に雨に濡れる心配をしたサジンに固く腕を掴まれ、ずるずると精霊たちの本拠地に連行されることとなった。