#15 嘘と通りすがりの冒険者
「アル! 大丈夫か、何かあったの?」
後を追ってきたサジンは獣人が残した灰や装飾物などを見てアルに状況を尋ねた。
「コトハは知ってるけど、改めて2人に伝えておかなくちゃいけないことが……」
「おーい、キミ達何かあったのかい」
「あれ、依頼主さん?」
サジン達とは別の方向から依頼主も駆けつけてきている。
四竜征剣の必殺音を聞いて飛んできたのかと思ったが、手にしていたジュースが詰められた瓶を見るに差し入れをしようとしていたらしい。
「って、な、なんだいこれ!」
最後に放ったセイス・スプラッシュでごっそりと枝が落ちた様子を見て依頼主は悲鳴をあげた。
「すごいですね。こんな希少な種が自生しているなんて」
「ああ、私が頻繁に管理をしに来ているからね。でもこれは……」
「アル君は何か見てた?」
最低限その木が希少なものであることをちらつかせ、加えて何を目撃したかという質問でコトハはそれとなくアルを誘導する。
「通りすがりの冒険者が獣人を処理していって、どうやらその木は巻き添えで被害を受けたのかと」
「そうなんだ……うん、差し入れついでに森の様子も確認したけど、きちんと調査もこなしてくれているようだし、正直に答えてくれているよね。見知らぬ冒険者の責任を取れだなんて言わないよ」
クエスト中に起きた不祥事はパーティの連帯責任で、メンバーは受注時に自筆の署名で記録されている。
アルがいくら頼んでも責任を1人で背負うことはできず、今はこうするしかなかった。
「ふむ。しかし獣人が出たならクエストは改めて依頼しないと……キミ達の誰かが討伐したんじゃなんだろう?」
「……はい。アルの言った通りならそうですね」
「ううん、もちろん今回の報酬は通常通りに支払うから安心してくれ。調査としてのお礼だよ」
「すみません、ありがとうございます。そうだ、せめて」
不完全燃焼気味であったウジンの提案により、獣人が残した灰などを回収してからギルドへ戻ることとなった。
アルもクエスト後の報告に付き合うつもりだったが、『初めての冒険者らしいクエストで疲れてしまったのだろう』と、ウジンに様子がおかしいことを見抜かれ、コトハと一緒に宿に帰らされていた。
「コトハ。どこかでご飯食べに行かない?」
「いいよ。何が食べたいとかある? アル君が決めていいよ」
「色々疲れた。がっつり食べたい」
「あ、初クエスト完了の打ち上げ?」
「そんなわけあるか。わかってるくせに」