#14 獣人との遭遇とその処理
「みんな、見て」
調査のクエストを進める途中、コトハがパーティを呼び寄せる。
指で指し示したのは人の足跡だ。
「まだ新しい。もちろんここの誰でもないし、明らかに大きい」
「依頼主のでもないか」
「あ、これも。人の目線ぐらいまで獣の歯の跡がある」
「……やっぱり獣人か?」
足跡の向きと木の幹に残っている歯型から推理して、獣の頭を持つ人型の生物である獣人が近くに潜んでいると見て間違いなかった。
コトハの注意を聞き、ウジンとサジンは無言で頷き合っていた。
「2人とも僕達のそばを離れないように。それと、すぐに逃げられる準備もしてくれ」
「……ウジン、やっぱり話しておかないといけないことが……」
他人のために体を張っているウジン達を目にし、アルはつまらない意地を張っている場合ではないと、四竜征剣のことを打ち明けようとした時であった。
「ウシー!」
とてもわかりやすい、ウシの獣人の雄たけびだ。
「……聞こえたか? 今、ウシー、って……」
「ああ、そうだよ。アイツら種族名を叫ぶんだ。よし、向こうだな……」
「! アル、どこへ行くんだ!」
「2人とも、コトハを頼んだ!」
前のヤギ獣人のように、もし集団で囲まれればピンチとなってしまう。
杭を放り投げて一番軽装になったアルは、先に制圧をしてしまおうと鳴き声がした方へ走っていく。
「……いた!」
「ウシー!」
「武器か……前みたいに突っ込むわけにはいかない……なら!」
フォーク型の鋤を手にしていたウシ獣人には、ダースクウカの突進はできないとアルは判断。
そうして手にしたのは金色に光る刀、ブリッツバーサーだ。
『セイス・フラッシュ』!!!
「ウヴっ……!?」
アルは獣人の鋤を避け、閃光のような勢いでその腹を切り裂く。
短い呻き声を漏らした後、獣人は間も無く灰と消える。
「ウシ?」
「ウシウシぃ?」
「……やかましい必殺音だけどこういうのは役に立つな」
セイス・フラッシュの音を聞きつけ、姿は見えずともあちこちから別の獣人の声が上がる。
「次だ、『ジアースケイル』!」
『セイス・デザート』!!!
新たな獣人を見つけ次第、アルは体を捻りながら回転し、赤黒い剣でつま先から頭のてっぺんまで細切れにする。
「……最後、だな。『ウェーブレイス』、来い」
『セイス・スプラッシュ』!!!
遠くに見えた獣人の背中に勢いよく振った大剣で発生させた衝撃波を飛ばすと、軌道上にあった枝をものともせず獣人を蹴散らした後もなお地面を大きく抉った。