#12 調査と四流の剣士
アルはウジン達と話が終わった後、急用ができたといって普段より早く仕事を切り上げて宿屋に戻った。
『コトハは私の宿屋で一緒に泊まってるから明日に備えて休んでくれていいよ。兄さんは知り合いの冒険者のところに休んでいるし』
普段より早い退勤となり、本来は宿屋にコトハがいてギルド2階の隅で時間を潰さねばならなかったが、サジンが手を回してくれていて、ゆっくり就寝できた。
翌朝、約束の時刻にギルドへと足を運ぶ。
「あれ? アル君?」
ギルドの出入り口の前で待っていたコトハは、朝から出歩いているアルを見ると不思議そうに首を傾げた。
そばにいた鎧を着た2人の人間も振り返り、それぞれウジンとサジンの顔が兜の隙間から覗く。
「なんか困ってるらしいから報酬山分けするって約束で同行することにした。ってことでよろしく」
「え。2人ともそんな話してあったの?」
「まあ詳しくは移動しながらだ。時間がかかるクエストなんだろ?」
なんでも、ウジンの知り合いが来ると言って待ち合わせをしていたようで、予想外の相手を目にしたコトハはしきりにまばたきをしていた。
それからクエストの依頼主のもとまで、なるべく自然にアルとウジンは接して、コトハに良好な関係をアピールしていた。
クエストの目的地であるユンニ西方にある森付近の屋敷に着くと、依頼主の男からロープと大量の木の杭を受け取った。
「それを目印として、ロープを使って等間隔で森に打ってきてくれ。そうすればくまなく獣人を調査したってことになるからな」
依頼主はそうして抜き打ちのチェックを匂わせることで、冒険者が仕事をさぼらないようにしっかりと対策をしていた。
「前回も言った通り、被害が出ておらず獣人の存在ははっきりとは確認されてない。けど今後の訓練としても用心しながらクエストを進める」
森の入り口、1本目の杭を打ったウジンは現地で改めて作戦会議を開く。
「アル。確かに獣人を目撃したんだよな?」
「ああ、そうだ」
「何か脅威になる特徴だったり知っている範囲で聞きたい」
アルはリワン村での出来事を事細かに説明した。
「リワン村には人造人間を研究してた元冒険者がいて、その人と仲間を追ってジェネシスって連中が襲ってきたんだ」
「人造人間……まさか、獣人は人によって作られた生物だというのか」
「状況から判断しておそらくな。幹部を名乗ってた人間の命令に従ってて、4体いたこともあって別の元冒険者も手こずるほどだった」
「そうか。でも2人が無事ってことはなんとか撃退できたんだな」
「それは……」
アルが返事に迷っているとコトハが小さく手招きをして耳打ちする。
「四流の剣のことは何も話してないけど、どうする?」
「あのな、四流じゃなくて四竜だから。別の悪い噂が広がるとこだったじゃん」