#11 不和とクエスト協力の交渉
「ウジン。アル君を悪く言われてはいい気分ではないわ」
「いいって、コトハ。ウジンの言ってることは至って正論だ。別に他意がある訳じゃなく、忠告してくれてる」
静かに怒りを表しているコトハを制し、アルはウジンに1つ頼みごとをした。
「もし獣人と遭遇したとして、ジェネシスって組織かブレン・ハザードって冒険者のことを聞いたら教えてくれないか」
「ジェネシスにブレン・ハザード。わかった、任せてくれ」
「それじゃあ今後もコトハのことをよろしく頼む。サジンも」
アルは別れの挨拶をしてギルドを後にした。
宿屋に戻ると夜のクエストに備えてすぐに就寝する。
「いらっしゃいませー!」
何でも屋が受注できるクエストのうち、効率よく稼ぐことができるのは酒場でのホール業務であった。
夜であれば比較的手取りもよく、コトハと部屋を共有するタイミングが合い、なによりまかないも出ていいこと尽くめであった。
今夜も店は繁盛していて、ドアベルが鳴るとアルはすぐに迎えに行く。
「いらっしゃいま──」
「はあ、やっと見つけたよ」
「ウジン。あ、すみません、すぐに案内します」
「いや、客として来たんじゃない。少し話をしたいんだ」
アルは店長に断りを入れて仕事を抜けると、店の裏でウジンとサジンからとある相談をされた。
「明日のクエスト、アルにも参加をしてほしい」
「……コトハか」
「うん、そうだ。今朝の一件があってからすっかり機嫌を損ねていて、このままではクエストに支障が出てしまう。僕もあれから謝罪はしたが、『気にしてない』の一点張りで……」
「気にしてるな」
「だよね……」
ウジンに加えてサジンも交渉は難航しているようで、揃って面目ない顔をしていた。
「ウジンは謝らなくていいよ。今朝も言った通り、実績が無い何でも屋に対してはまっとうな考えなんだから」
「いや、そんなことは無い。アルにはその場を取り繕う言葉に聞こえてしまうだろうが、コトハが評価をしているキミには、ただの冒険者に留まらないなにかを感じる。それだけじゃなく、あちこち他のパーティに声をかけているという噂も聞かないし、おこぼれを期待する何でも屋ともまた違うらしい」
ウジンは自身の主観だけでなく、アルの堅実にクエストをこなしている様子を評価する。
「あれだけ失礼なことを言っておいて図々しい話だが、クエストに協力をしてほしい。コトハの件は抜きにして、いち冒険者のアルへの正式なお願いだ」
「そうだな……まあコトハのためでもあるし、むしろこっちからお願いしたい」
「本当か、ありがとう」