#98 着陸とネラガの歓迎
『ようこそ。ユンニよりお越しの冒険者の方々』
ネラガへ着陸する飛空艇は現地のギルド職員が手にする横断幕で歓迎された。
「それでは改めてお知らせいたします。皆さんは今後ネラガ周辺でのクエストへ出てもらうにあたり、明日はこちらから手配した冒険者による現地の案内を受けていただきます」
着陸後、オルフィアが冒険者の前でネラガでの予定を説明した。
「飛空艇から降りる際、パーティの代表には木の札をお渡ししました。それにより担当や案内の時刻などを指示させていただきますので、パーティ内で確認いただき、受け取っていない、余分に持っている、などが無いようにお願いいたします」
「みんな、これで大丈夫だな?」
暫定リーダーのサジンは札をもって、まだ固い表情でメンバーに確認する。
「てかオルキトがいるからいいんじゃない?」
「僕も最近のネラガの状況は把握してないので必要ですよ」
「ああ、本命の獣人は最近になって出るっていってたもんね」
レーネとオルキトのそんなやり取りを神妙な顔で見ていたアル。
焦る気持ちがあったが、まだ1人では来たる戦闘の機会には不安があった。
頼みの綱は地中に埋まっているジアースケイルだが、飛空艇から降りたにも関わらずその存在を感じられずにいる。
「……ああ、飛空艇で2日かかったからユンニからここまで到着に時間がかかってるんだ」
不審に思ったアルは試しに地面に手をつけてみると、ちかっと頭に過ぎていくものがあり、それによって全てを理解することができた。
一晩も経てばネラガまで到着するようで、今後は空路や深い海を経由する旅路にはそういう事態があることを、アルは頭の隅に置いておいた。
「それでは、夜には歓迎会も催しますので是非ご参加ください」
オルフィアはそれで司会を締め、『星の冒険者』の元へと歩み寄っていく。
「それじゃあ家まで案内するわ」
ネラガではオルフィアの家へ泊まると、そう約束していた女子組が後に続く。
「じゃあ俺はオルキトのところか」
「……僕らは姉弟ですが」
「あ、ごめん。素で間違えた」
こうして一行は日々多くの冒険者が集うネラガのギルド。
隣接したそれに劣らない佇まいの建物に到着した。
門をくぐった先には観光地と言われても疑わない、立派な屋敷や花壇、池などが目についた。
「そういや、オルキトの親ってどんな人なんだ? 役割とか」
「ギルドマスターを務めて一線を退いた父ですが、元は剣聖としての実力者でした。母は今も現役の冒険者で、役割は精霊召喚師です」
「……はあ、両親に会うのかぁ」
迷惑をかけられている姉弟の両親と顔を合わせるとなると、アルは乗り気でなかった。
それを見たオルフィアは声をかける。
「母さんは少し遠くまで遠征してると聞いたから、今日明日では会えないわ」
「え、ほんとですか?」
「嬉しそうね」
アルはにやけていたらしい口を結んで、全力で否定をした。
「いぬがいるよ。いぬ。いぬいぬ」
「誰だ今の頭悪そうなやつ」
声がした方には、白い犬に向かって歩いているコトハの姿があった。