あのお店、繁盛す!? 9
「うんうん、あの、ロキアの焼いた猪の丸焼きが1番美味しかったわ!?」
ロキアさん…あぁ、あの、手を右左逆につけられた人だ。
「とにかく、色々したかったから世の中の俗と切り離して、山籠ってたの! お陰でマダム好みの美青年でしょ! これで色んなマダムを誘って治療するのよ。 もちろん、その時『宣伝して』なんて言わないわ。 『子供を育てナイトね』とか『お金イル』とか…」
「それって詐欺かなんかっすか?」
「失礼な! 詐欺ではない…はず。 治療は一流だからね! それで、マダム達の同情を買うのよ! そうすれば友達に宣伝してくれるってわけ。」
「さすが師匠! 美青年っぷりをうまく利用してますよね!」
「ハリー、褒めてるんだよね?」
確かにナナージュ嬢の言う通り、外国人の美青年が優しい言葉をかけて、見事な治療をしてくれるだけで女性は嬉しいだろう。 そこに子供がいるからお金が…なんて弱みを見せるわけだよ。 女性の同情も買えるってわけだ。
さすが悪魔だ。
「さぁ、明日からはその作戦で行くわよ!」
「すみません、そろそろ詰所に戻らせ…」
「いや、ダメでしょ。 これから忙しくなるんだから!」
オレは心の中で大佐長に助けを求めた。
大佐長も1週間こっちに来てくれなかったなぁ。
ハリー君だけが優しく微笑んでくれてお茶のおかわりを注いでくれた。
…もう、ハリー君だけが救いだよ。
「あ、そういえばリリーちゃんも見なかったんですが…」
「あ、リリーはジャコモさんのところに泊まり込んでいますよ。」
ハリー君が答えてくれた。
「え、一体何のために。」
「リリーの力を借りたいから接待してるみたいよ。」
ナナージュ嬢が体を伸ばしながら答えた。
「…みんな何考えてるんかわかんないっすね。」
オレはお茶をすすった。