あのお店、繁盛す!? 3
「おーい! どうだぁ?」
背が高い、イケメンのオレの上司、アルファド・ラシュザ第三騎士団大佐長が店に入ってきた。
オレは速攻で隣へくっつき、小声で言った。
「もう、ここ、嫌なんですよぉ。 あの人、怖いんですよ。 魔力を感知できるオレの立場になって考えてくださいよぉ。 そして、めっちゃこき使うんですけどぉ。 あの人、全然自分では働いてないっす。 もう、嫌っす。」
オレは早口で訴える。
「まぁまぁ、お前がここから離れると一生自分の顔を拝めなくなるだろ? それに特別手当で色々出したりしてるじゃないか。 昨日も布のぬいぐるみ代出してやっただろ? 効果あっただろ? ナナ、今、ぬいぐるみ抱いてニコニコしてるし、可愛い。 お前は偉いぞ!」
そしてオレの頭をぽんぽんする。 いや、女子なら惚れているだろう。 オレはただ、無責任な上司にイラっとした。 何でこの上司はこんな大悪魔様に惚れているのか、本当に分からない。
「で、何で来たんですか!?」
「まぁ、そう、不機嫌になるなって。 昨日の放火についてだ。」
「アル、昨日の犯人がわかったの!?」
ナナージュ嬢が布くるみを愛でる手を止め、こちらを見た。
「あぁ、やはり、第一騎士団だったよ。」
「でも、リリーちゃんは予知できなかったんすよね?」
「そう! ニールサの言う通りよ。 リリーが予知できないのなんて、おかしいわ。」
「…リリーちゃんが予知できないのは仕方ない。 あれは、あの、ちょっかいを出しに来ていたやつじゃない。 それだけだ。 犯人は第一騎士団お抱えの魔術師だ。」
「え! あいつらに魔術師がついてたんすか!?」
オレは驚いた。 第一騎士団には魔術師はいないはずだし、何より、回復魔法士としてナナージュ嬢をスカウトしに来たはず。
「なるほどね。 どうりで魔法くさかったわけね。 帝国内には魔術師はどれほどいるの?」
ナナージュ嬢が聞いた。
「あぁ。 帝国の人間は元々魔法は使えないはずだから、全員が外国人であると考えている。 第二騎士団の国境担当者が公表したデータによると魔術を使える人間は20人ほど帝国内にいる事になっている。 もちろん、ニールサ、ナナも入れてのデータだ。」
「そうなんすよ、オレ、回復魔法士として登録したんすよね。 懐かしい。」
思わず懐かしんでしまった。