あのお店、開店です 10
俺とジャコモは井戸から地下へと降りた。
ここの井戸はただ水が溜まっているだけでなく、横に繋がる道がある、珍しい井戸だ。
しかし、最近その水が干からびてしまったので井戸として機能しないとのことで閉鎖されてしまった。
俺たちは下へ降りて、横の道へと入る。
ジャコモが火をつけた。
「このたいまつもナーハヤのものでね。 水に濡れても消えない、珍しいたいまつなんだ。」
ジャコモが嬉しそうに語る。 いつのまにナーハヤ商品のマニアになったのだろうか。
「あ、たいまつの火で思い出したんだが… 今朝、『レタブリ』、放火された。」
「はぁ!? 何さらっと重大なことを言ってるの?」
「ハリー君の結界とナナの魔法で特に問題はなかったんだよ。」
「…あれか? 第一の馬鹿達か?」
「ナナに言わせると、魔法が使われていたらしい。 魔法臭かったって言ってたから。」
「え、あの子、臭いで魔法かどうか分かるって事? 本当、人間離れしてきたなぁ。」
まぁ、人間離れした可愛さだからな。 仕方ない。
「ちょっと、アル。 ニヤニヤして気持ち悪い。 どうせナナージュが可愛いとか考えてたんだろ? このムッツリが!」
「な! ムッツリでない!!」
そんなどうでもいいことを話しながら奥に進んでいくと浮浪者達に会った。
「…あんたらどっから来た?」
浮浪者の1人が聞いてきた。
「あぁ。 ちょっと上の世界から。 通してもらえる?」
そう言うとジャコモはお金を握らせた。
「兄ちゃん、これじゃ足りないなぁ。」
1人が剣を取り出した。
「そうだねぇ。 兄さんたちにはここで死んでもらって、その服も頂こう。」
そう言うと浮浪者達は一斉に襲ってきた。
が、しかし、相手が悪い。 俺たちは腐っても騎士団の大佐長。 地下水路は暗いが、そんなのは関係ない。ものの数分で片付ける。 もちろん、殺しはしない。 全員を気絶させた。
「あーあ、お金もらって大人しく通してくれればいいのに!」
ジャコモの声が明るい。