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あの日の出来事2

「…ナナージュ、ナナージュ! 聞いているのか!!」

ヤード様の声だ。


しまった。 めまいと同士に、過去を振り返り過ぎてしまった。

「…ヤード様、私とあなた様との仲は国によって認められている婚約なのですよ。 ヤード様のわがままが通るものではありません。」


「くっ、そ、そーいう所が嫌なんだよ! お前は可愛げが一切ない! いつもやれ『ヤード様、将来の為に勉強をしましょう』やら『ヤード様、政治について語り合いましょう』やら。」


ヤード様は何を言っているのであろうか。 リザルト帝国の第二王子としては当たり前ではないのか。 第二とはいえ、この国を担う人物であることには変わりない。 今のうちから帝国民の事を考えるのは常識だと思うのだが。 そもそも、私に『しっかり』を求めたのはヤード様自身。


「ナナージュ、お前だってたまに外へ出かけていたであろう? この私を残して。 …他の男と会ってたんではないか?」


え。 何を言っているの?  お母様が迎えに来ていたのを見てたよね?


「それにだ、あの日だって、俺は何も悪くないのに、みんなに怒られてしまったではないか。 お前が珍しく泣くものだから。」


え。

こいつ、何。

何で私はこんなグズに惚れていたのであろう?

何で? 何で? 何で?


ナンデ。。。


心の中で何かがパリーンと割れる音がした。




「おい。このクソ王子。」

私の口が勝手に開く。

「クソ王子、いい加減にしろよ? 色恋頭で余計にお前の頭が空っぽなの?」


周りの人間がザワザワと騒ぎ出す。 所々で「あれ…ナナージュ様?」やら「完璧黒髪令嬢が…」などなど。


「う、うるさーい!!!」


「お前は王子のくせに女の子に囲まれたいだけなの? 政治について何にも知らないとか王子なの? キラキラしたものだけじゃ駄目なのわからないの?  それに出かけていたのを浮気だって?  お母様と一緒に出かけてたの見てたよね? それまでバカなの? バカ王子なの?」



バカ王子…もといヤード王子は拳を固く握りしめてプルプル震えているのが分かる。

怒っているのだろう。

しかし、怒っているのはこちらもだ。



「お、お前なんか、この国から出て行けーー!!」

ヤード王子がそう叫ぶ。


「上等!! こんな王子がいる国なんて出ていきます!」


私は窓の方に手をかざし、小声で歌う。




ボンッ!!


バリーーン!!


窓が爆発してガラスの破片が飛び散る。 


「きゃーー!」

「何だ!!」

「ゆ、雪???」


ガラスの破片は雪となったのだ。


みんなが騒いでいるその隙に常に掃除をしていたと思われるメイドからほうきを取り上げて再び歌う。


そうするとほうきと私の体が浮かぶ。

私はほうきに腰がけて空へと舞う。



「ナ、ナナージュ、お、お前……魔術師だったのか……」

遠くでヤード王子の声がしたが無視をして割れた窓から脱出した。




今宵はなんて月が綺麗なんだろう。


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