あのお店、開店です 5
「ジャコモ、ちょっといいか?」
俺はジャコモに声をかけた。
「なんだ??」
「…王は大魔術師を呼んでこいと命令したんだぞ? その件はどうするつもりだ?」
「大魔術師はまだナナージュが正体とは分かっていない。 お前たち第三の大魔術師関係の書類は書き直してもらう。 申し訳ないが噂程度で魔術師の腕は大した事がなかったぐらいにしてもらう。」
「…それだと第三の評判は落ちる。」
「元々第三は嫌われてる…」
「それは言うなよ…」
第三騎士団は最近はリザルト帝国の評判は良くない。 もちろん、仕事はちゃんとこなしているが、新しく入る騎士団は貴族でも力の弱いものだったり、問題があって回されたものが多い。 それらのケツを叩いて指導するのは正直骨が折れる。 でも意外と根がいい奴が多いので、誤解されていたり、家の力によって追いやられていたが、実は実力者なものが多かったりした。 しかし、ニールサのように生意気な奴が多くなってしまったのが残念な点だ。 第三の奴らは帝国の評価が低い事については「大佐長がノア令嬢をふったからだ! 愛人になればよかったんですよ!」と冗談で言われたことがあるが… まさかな。
「えっ、アルが帝国から嫌われているの? アルみたいな実力者なかなかいないのにね。」
相変わらず浮いてるナナがぽりぽりお尻をかきながら話しかけてきた。 お尻をかくなーー!
「いや、雑用を色々押し付けられているだけだから気にすることはない。」
「…なんでみんなしてここを守るのかなぁ。」
ナナはそんなことを呟いた。 ナナにとってはいい思い出は最後の記憶により全て潰れた場所だもんな。 帝国を恨む気持ちは、分からないわけではない。
「ナナ、帝国の上のやつは確かに問題がある奴が多い。 しかし、国民は何も悪くないだろ。 お前だってよくわかっているはずだ。 お前の大切な人だってまだ帝国に残っている。 その人たちの為と思えばいい。 いずれそれがお前のためになるはずた。」
ナナは少し戸惑いの顔をしながらコクリとうなづいた。
「さぁさぁ、ナナたちは明日から店の細かい打ち合わせ、そして、広告を配ってもらうよ! 私は第一の動きを監視しておくよ。 アルは…いつも通りで。 第三が下手に動くとそれはそれで怪しまれるからなぁ。」
「あっ、そういえば、これ、よろしくね!」
ナナが突然、紙を渡してきた。
「こ、これは… 何だ! この額は!?」
「いや〜、情報を得るために仕方なかったよねっ!」
ナナが渡してきたのは普通の平民の給料2ヶ月分のお金がかかった酒代だった。
どう考えても使い過ぎだ。
頭が痛くなった。