あのお店、開店です 3
「…さて、からかうのはこのくらいにして、アル、本題だ。 これからの作戦についてだ。」
ジャコモの顔がキリッとなる。
心がもたないからかいは本当にやめて欲しいものだ。
「ナナージュは今、城下街の、昔から馴染みのある店にお世話になっている。」
「ああ、ナナのとこの元使用人がやっている、粉物、調理器具にスパイスとかの料理関係の物が手に入る店だろ? ナナ、学生時代からあそこを本拠地にしてお忍びしてたもんな。」
「きゃー、ストーカーこわいー。 お前、学生時代のナナージュも陰でこそこそ見守りと言う名のストーキングをしてたもんな。」
「…そんな事ない。 純粋な気持ちで見守ってたんだ。 からかうのは終わったんだろ?」
「ストーカーってだいたい同じ事言うんだよなぁ。 その店から3ブロック先の所にちょうどいい感じの空き店舗があったんだ。 今回はそこを買った。 店の内装も1週間以内に終わらせる。 店の申請も既に出しておいた。 これも1週間以内に許可されると見込んでいる。 店の名前は『レタブリ』だ。 そこでナナージュには回復が得意な魔術師として名を売ってもらう予定だ。 …銀髪の青年魔術師、ミーオとしてな。」
ジャコモの仕事の早さにはいつも驚かされる。 一体いつのまにこれほどの準備を進めていたのであろうか。
「ところで、ナナを青年に見立てるのは難しいだろ? どう変装しても可愛い女性だ。」
「…大丈夫、そう思っているのは帝国中でもナナージュの父親とお前だけだ。 あと、私にお前のナナージュへの想いを隠そうとしなくなったのはちょっと…気持ちが追いつかないというか、悪い。気持ちが。」
ジャコモは不思議なことをたまに言うな。 昔からあいつは可愛いんだけどな。
「では、ハリー君とリリーちゃんはどうするんだ?」
「あの2人も一緒にいてもらうつもりだ。 とんでもない美形の看板息子と娘だからな。 美形の子供持ちの青年。 これはこれで話題になるし、奥様方の同情も集められる。」
「考える事が腹黒い。」
「褒め言葉として受け取っておくよ。」
「俺たちは近くにいない方がいいのか?」
「…本当は近づいて欲しくないんだが、それでお前のストーカーが治るとは思ってない。 バレないように陰で支えてやればいいさ。」
「…だからストーカーではない。」