あの魔物討伐隊の真相 5
魔物は相変わらず不気味な笑みを浮かべています。
隣のリリーが震えているのがわかりました。 私はリリーを抱きしめ、励ましました。
「リリー、大丈夫だからね。 師匠とバイロン様もいるからね。」
「ハリー…すごく嫌な予感がするの。 胸がとっても苦しいの。」
師匠は爆発魔法、バイロン様は氷魔法を得意としています。 地上に降りた2人はその魔法を連動させながら敵に向かって連続で魔法を打ちます。
魔物に当たったのでしょう。煙がもくもく上がっています。 しかし、煙が消えた先の魔物はにやけてばかりでした。 全然効いていません。
「ツマラン、ツマラン。 オ前ラハ寝テロ。」
魔物がバイロン様、師匠を掴み、地面へ投げ飛ばしました。
「師匠!! うわっ!」
気付けば目の前にあの魔物がいました。
「本当ニ精霊臭イ。 不快。」
魔物がこちらに向けて炎の魔法を打ちました。 明らかに精霊と人間のハーフのリリーを狙っているのです。私はシールド魔法で塞ぎます。
炎の魔法を打ち続ける魔物。 対して私もシールド魔法で塞ぎ続けます。
「ししょー様ー! バイロン様ーー!!」
その間リリーは気を失っている2人に叫び続けてました。
「生意気、生意気、不快! 不快!!!」
魔物がイライラし始めました。 そしてこちらを睨みつけます。 恐ろしかったです。 でも、リリーを守らなければいけません。 負けてられないのです。 魔力の消費いっぱいまでシールド魔法を強化します。
その時、
「こ、氷魔法… アローブレスっ…」
バイロン様が魔物に氷の矢を放ち、魔物の背中に当たりました。
「クソッ」
魔物がふらつき、こちらを背にし、バイロン様の方へ向かいました。 魔物の背中は青い血が出てました。
バイロン様が氷魔法を連発させてますが、魔物は構わず前へ前へ、バイロン様の方へと歩みました。 そしてバイロン様のお腹に燃えた拳を入れました。 バイロン様は口から血を吐き出しました。 そして倒れ込みます。
「バイロン様!!」
その声に魔物が反応して、再びこちらに来ました。
そして、
「オ前ノ手ガイラナインダナ。」
そう、魔物が言うと、私の手を火の刃で切りつけました。
「うわぁぁああ!!!」
燃えるように手首が痛い。 痛い。 手はやはり、もう、私にはありません。
「ハリー、ハリー!!」
リリーはどこからか取り出した痛み止めの効果もある薬草を私の切れた手首に擦り付けます。 お陰で気絶することなく、何とか意識はあります。
「サァ、精霊、シネ。」
「ハリー!ハリー!」
目が霞む向こうで魔物がリリーに炎の刃を向けています。
「リリー!!!!」
師匠の声がしました。