あの場所へいざ調査 3
ハリー君の魔法陣がだんだん大きくなり、それが色んな色へ変化していく。 ハリー君の周りの風が強い。
それを5分ほど続けた後、魔法陣が消え、風も収まった。
「ふぅ… 終わりました。」
ハリー君がこちらへと歩んできた。
「何が原因か判明したのかい?」
農園主が聞く。
「はい、農園南側の結界の劣化ですね。」
「結界が劣化することなんてあるのかい?」
俺はハリー君に聞く。
「実はこのリザルト帝国で結界を張っていたのはマジュク家の奥様…マリア大師匠であることはお話しましたよね。 リザルト帝国に嫁いでから、リザルト中、少しずつ魔物が入らない結界を張っておられたのです。 その時は魔物が少なかったこともあり、簡単だったとおっしゃってました。 ここは結界を張った中でも初期の結界だったようですね。 マリア様も亡くなり、結界の管理も甘かったこともありますね。 …申し訳ありませんでした。」
「いやいや。君が謝ることないさぁ。 そういえばこの農園に一度だけ、マジュク家の奥様がやってきてな。わしはその時はただの見学だと思っとんたんだがな。…その時に結界を張ってらっしゃったんだなぁ。 知らないうちに守って頂けてたとは。 知らなかったとはいえ、お礼一つ言えず、すまんかったなぁ。」
農園主がハリー君に深々と頭を下げる。
「あの時の『期限が切れる』とは結界の期限だったんだね。」
「はい、アルファド様、その通りでございます。 …にしても、計算が少し合わないんですよね。 私達の計算ではあと3年は大丈夫だろうと思ってました。 3年後くらいに今ぐらいの結界の限界を迎え、弱い魔物が出てくるぐらいかなと。 …少し困りましたね。 他の結界の調査も視野に入れないといけないかもしれません。」
「で、ここはどぉするの?」
ニールサがハリー君に聞く。
「もう一度、私の、魔物封じの結界を張ろうかと思います。 …下準備もしてきました。 今から取り掛かってもよろしいですか?」
了承すると大きなバッグを下ろして、色々と取り出した。
「うわー、面白いっすね。 これは魔力の底力を上げるってナーハヤ大国で話題になってたやつじゃん! …あとは栄養剤?? これもナーハヤ大国に売ってたなぁ。 高いから買えなくって。」
ニールサが覗き込み、興奮したように話しかけていた。
「全て師匠が作ったものなんですよ。 精度の高さから高額になってしまいます。 でもナーハヤ大国ではなかなかの人気商品ですよ。 私達はこれを売って生活していますからね。 基本的にはあの村じゃ儲からないし、師匠は傷を治しても貧しい人からお金を取らない信念でやってます。 あと、上手いこと転がしていた土地や資産運用も最近はどうも調子良くなくて。 リザルト帝国の旦那様に仕事も貰ってるんですよね…ふふっ」
ハリー君から乾いた笑いが聞こえた。…こんなところで台所事情を聞くことになるとは。
「あ、ハリー君、もちろん、今回の協力費は国にガンガン請求するからね!? 君たちの懐も暖かくなると思うよっ!」
俺は必死にハリー君を慰めた。 ナナ、しっかりしろよー。
ハリー君はその後1時間かけて魔物封じの結界を張った。
「これで100年は問題ないです。 この農園だけでなく、リザルト帝国の1/8ほどの結界を張っておきました。 さぁ次へ行きましょう。」
栄養剤と思われるものをぐびっと飲みながらハリー君は答えた。