あの大魔術師の秘密と現状 5
「ナナ、いや、ナナージュ大魔術師にお願いがある! どうかリザルト帝国へ。」
「そうです。 あれほどの早く腕をつけるなんて…それも印を結んだ訳でもなく、唱えたわけでもない、前準備がない状態であの魔力…是非にお願いします。」
騎士2人組は私に頼み込んできた。
「嫌」
いやいや、何であんな国に行かなきゃいけないのよ。 いくらアルのお願いだからと言っても無理だ。
「ナナ、断るのが早すぎる!」
「普通に考えてみて? 1、面倒 2、私、死人 3、ヤード死ね 4、利益なし」
「…その通りなんだが、最近、リザルト帝国の国境付近で魔物がたくさん出るようになってきた。 運が悪いと街の方まで流れ込んでいる。」
「それはおかしいわね… 実はリザルト帝国はお母様が生きていたころに魔物が侵入してこないように結界を張っているはずなのよ。」
「魔物の問題だけじゃない。 最近、帝国の国王付近がどうも怪しくて… こんな話を掘り返して申し訳ないが、ヤード様がナナを婚約破棄した時に連れていた女がいただろう? 今ではヤード様との婚約も破棄し、なぜが第一王子の婚約者として帝国の城で幅を効かせているんだよ。 あの婚約破棄だって怪しくてな。」
「…翌日の新聞記事のことね。 お父様が一度持ってきてくれたわ。 私は見事にはめられたみたいね。 でも、もう過去のことよ。 それに移動とかもう、面倒。」
「面倒ばっかり言うなよ。 うーん、困ったなぁ。」
アルが頭を抱える。
「行ってあげれば? ナーナちゃん。」
振り返るとそこにいたのは私の叔父であり、ナーハヤ大国の王、ハウルド・ナーハヤ国王がいた。
…いつの間に侵入したんだろうか。
「師匠、ハウルド様はこの家の隅に瞬間移動できる魔法陣をご所望でしたので、2週間前に作っておきました。」
ハリー、とんでもない事後報告をしてくれたわね。
「「ハウルド王にご挨拶申し上げます!」」
騎士2人組は深々と頭を下げる。
「うむ。 顔を上げることを許す。 しかし、これは公式な場ではなく、今ただ姪に会いにきた叔父。 礼儀など気にするな。」
「そうそう! このジジイの言う通り! ナーナ、ヤッホー!!」
声のする方を振り返るとナーハヤ大国の第一王子のノーツがいた。 こいつもいつの間に…
「師匠、ノーツ様も瞬間移動出来る結界をご所望でしたので、1週間前にハウルド様の魔法陣とノーツ様の魔法陣を合体しておきました。」
ハリー、とんでもなさ過ぎる事後報告をしてこないで…
「「ノーツ第一王子様にご挨拶申し訳あげます!」」
騎士2人組はまた深々と頭を下げる。
「って、なーんで揃ってうちに来るの!?」
私が文句言うと叔父と従兄弟は揃って、
「「だって楽しいから」」
これがこの国のトップで大丈夫なのか不安すら覚えるが、困ったことに仕事は出来るタイプらしい。
「でも、ナーナちゃん。 そろそろちゃんとケリをつけてくるべきじゃないか? 逃げてばかりもダメだと思うな、おじさん。」
「う、べ、別に逃げてる訳じゃ。」
「そうかなぁ? 必要以上にリザルト帝国に対して拒否反応が出てる気がするよ。 どうでもなかったら里帰りの一つもできるんじゃないのか? それにもう少しで期限も切れちゃうよ。」
お、叔父さん…なかなか痛いところをついてくるな。
「わ、わかったわ。 ハリーにとりあえず調査させる。 …ところであんた達何やってんの?」
私の視線の先には座ったノーツの肩にニールサが手をかざしていた。
「…はぁ。。。 ナーナちゃん、これ、ヤバいね。 肩があったかくて、気持ち良すぎて… 肩の痛みにすごくいい。あ、頭も軽くなってきたかも。 て、天国…」
ノーツの顔がまただらしない。 きもい。
「ノーツ様、いかがですか。 いやー、私、人の悪いところと、それを治癒する力もあるのですよー! ノーツ様は肩の痛みからの頭痛を伴っていらっしゃっていたようなので… 毎回頭痛のたびに、頭痛の治癒のみしていらっしゃったようですが、根本的な肩の治療をしませんと。 私はそれに気持ち良さをプラスした治療ができますよ。」
鑑定士、すごいな。 そんな裏技もあったとは。
「うわ。 ニールサがこんな丁寧な敬語を使えるなんて… あいつ、ごますりうまいな。 俺の治療の時はささっと治して終わりだったのに。」
アルがつぶやいているのが聞こえた。