あの大魔術師、苦戦する 8
「ピンクちゃーん!!」
「魔法使いのお姉ちゃん! こんにちは!」
「ピンクちゃん、もう大丈夫! いい方法が見つかったわ! おうちへ行きましょう。」
私はまたピンクちゃんに家に連れて行ってもらう。
「…ピンクちゃん、この前も思ったことなんだけどピンクちゃんのお家行くまでって大変ね。 変な脇道をぐるぐる進むし、空き家の庭を通り過ぎるし。」
「それはね! 真っ直ぐだとおうち覚えちゃうでしょ? だから遠回りして秘密にしてるの!」
…私、まだ信用がないんだなぁ。
相変わらず変な道を通らされてピンクちゃんの家に到着し、中に入れてもらう。
「今回はいい方法が見つかりました!」
「本当ですか!? …やはりお嬢さんはどこかのお嬢様なのですよね。 服装も生地が違う。 そして仕草も優雅だ。 そして何よりも賢い。 どうか私たちに力を貸してください!」
「もちろん。」
そのとき、タイミングよく戸を叩く音がした。
「おい! いるのか!」
「は、はい。」
ピンクちゃんのお父さんが扉を開ける。 大きな男が1人。 小柄な男が1人いた。
「…お前たちまだ引っ越しの準備をしてないのか。 ここはオレたちの土地だそ!」
大柄な男が話す。 なるほど。 この男がピンクちゃん一家を困らせている権利書を持った男ね。
「待ちなさい! この土地はあなたの土地ではないわ!」
私は男とピンクちゃんのお父さん、二人の間に割って入った。
「なんだぁ? この嬢さん。 おい、ムジュラ、何とか言ってやれ!」
「嬢ちゃんよ? 帝国にはな、法律があるんだよ。 ここの土地は俺らが権利書を持っているわけ。 わかる? 法律には逆らっちゃいけないんだよ?」
「あなたが仰っているのは『帝国新法』のお話よね。 『帝国旧法』にはこうあるわ。第2条12項目に『250年以上住んでいればその土地は住んでいる物の所有者とする。』とね。 この方々の戸籍によりここに300年住んでいたことは証明されているわよ。」
全てグイド様の受け売りだけど覚えといてよかったわ。 グイド様、ありがとう!
「て、帝国旧法? な、何だそれは? ムジュラ、知ってるか?」
「いや、知らない。 この嬢ちゃんが適当なこと言ってるんじゃないのか?」
「…なら明日までに調べてきなさいよ。 詐欺で取るのなら裁判所まで行ってもらうわよ。」
「さ、裁判!? ムジュラ、今日は引き上げるぞ!」
「は、はいぃ!」
そうして男たちは帰っていった。