あの大魔術師、苦戦する 4
「…あー。」
「ナナ、どうした?」
私はその時、遠い昔のことを思い出していた。
あれは私がまだヤードの婚約者だった若い頃、王族になるということで色んなことを覚えるのに勤しんでいた時代、そして帝国の学校に入ったばかりの頃の話。
ある日、こことは違う川のほとりへ1人で休憩に来たの。
お忍びで城下街に遊びに行ったついでだから一般帝国民に見えるように変装をして。
その時、その川のほとりで女の子が1人泣いていた。
私より少し背の低い、ピンク髪の女の子。 とても可愛らしい子だったわ。
「ねぇ、一体どうしたの?」
そう聞くと、こちらを見ながらもずっと泣き続ける女の子。
私は「ふぅ。」とため息を一つついて、魔法で花束を出した。
ピンク髪の女の子は突然出てきた花束にびっくりして泣き止んだの。
そして花束を渡すとニコッと可愛い笑顔で受け取った。
「…魔法使えるのは秘密ね。」
そういうと次に女の子はクスリと笑った。
「ありがとう、魔法使いのお姉さん。」
「どうして泣いていたの? あなたのお名前は?」
私は再び女の子に聞いた。
「…名前は…簡単に言うなって言われたの。あのね、個人情報は簡単に教えちゃダメだってお父さんとお母さんに言われたの。 誘拐されたりするんだって。」
「じゃ…ピンクちゃんでいいかな?」
「うん! ピンクちゃんでいいよ! 私、ピンクちゃんね! あのね、今、うちのお家が売られそうなの。 何か悪い人が来てね、土地を勝手に持っていくみたいな話をしてたの。」
「えっ、ちょっと詳しく教えてくれる?」