あの少女が欲しいもの 10
「続いて申し訳ないですがもう一つ。 その令嬢、どうやら魅了の魔法を使っているので近づけないんです。」
ナナージュがエド様に訴えた。
『うむ。 そうじゃな。 お前たち魔法を使う子たちにはあの臭いは辛いだろうに。 魔法が使えなければアレは一番好みの匂いとなるのだかな。 …これに関しては少し時間をくれないか。 効く魔法陣を考えてみるとしよう。』
エド様がそう答えるとナナージュは感謝の言葉を述べた。
『もう、そろそろ、限界…らしいな。 そろそろよいな。』
エド様はそう答えた。
水晶の向こうではハウルド様とノーツ様が深く頭を下げた。
『…ナーハヤ大国の王族どもは色男ばかりじゃな。 ちっ…』
おかしい。 今舌打ちが聞こえた気がした。
『こちら側の男たちの方が難があって落ち着くな… 特にそのナーハヤの男。』
「お、オレっすか?」
ニールサが自分を指差した。
『あぁ。 お前は女運がない。 落ち着く。 気に入ったのでお前には祝福を。』
「えっ、ちょっ、女運って…」
『では。』
ニールサが話している途中でエド様は姿を消したらしく、リリーちゃんがゆっくりと布団へ倒れ込んだ。 そしてすぅすぅ寝息をたてて眠り出した。
「祝福って言われましたよね! オレ!」
ニールサは喜んで飛び回っていた。
『少しいいか。』
ガイオ殿が口を開いた。
「お父様!!」
ジュリエッタ嬢が水晶の前へ飛び出した。
「お父様、ジュリエッタです! お久しぶりで! お元気そうで!」
『あぁ… ジュリエッタ。 お前にはなんと苦労をかけただろうか。 何度謝っても謝り足りない。』
「お父様、いいのです。 こう無事を確認できただけで幸せです!」
流石にこの水晶越しの再会にはここにいる皆んなが感動した。
私ですら目に涙が溜まるようだ。
これまでのジュリエッタ嬢の苦労を考えるとそう思わざるを得ないのだ。