あの少女が欲しいもの 9
『うむ、我が子ども達よ。 国守り感謝する。』
エド様が大きく頷く。
「…我が子?」
ナナージュが首を傾げた。
『ナーナちゃんには伝えてなかったな。 私たちナーハヤ民にとって精霊は神なんだよ。 精霊の存在が近いのはそのせいだ。 特に私たち王族は秘密裏で精霊を信仰してきた。』
「精霊信仰の中心地はリリーの生まれた場所ではなかったの?」
『…よく知っていたな。 そこは大昔にナーハヤの城があった場所なんだ。 本当の精霊信仰の中心地はナーハヤ城…ナーハヤ王族なんだよ。 だから王族の血を引くナーナちゃんもエド様を見た時に体が勝手に膝をつき、勝手に首を垂れただろう。 血が信仰しているんだよ。』
「でも見た目はリリーちゃんじゃないのか?」
私は不思議に思い、ナナージュに問いかけた。
「ジャコモやアル、ジュリエッタちゃんにはただリリーが話しているように見えるかもしれない。 しかし私たちは違うのよ。 大きなお方、白く立派な髭を生やし、吸い込まれそうなくらい目が大きく、白い服を着た品格のあるお年を召した方が見えるのよ。」
「その通りっす。 オレもそう見えます。 神々しいオーラびんびんっす。」
ニールサ君が首を縦に振りながら答えた。
『君が運命の子か。 難儀な運命を与えてしまったな。 いや、そもそも男だと勘違いしてたことを謝らなければならないな。』
エド様はナナージュに話しかけた… やばいな。
「えっ、死ぬか戦うかの運命は聞いてたけど男と間違えてだ話は初耳なんですけど…」
『えっ…』
エド様はこちらを見た。 正しくはリリーちゃんがなんとも言えない表情でこちらを見てくる。 気まずいと言わんばかりだ。
ナナージュもこちらを睨んできた。 えっ、私が悪いのか?
『ご、ごほん! なるべく運命の子の手伝いはしてやりたい。 何でも疑問に思ったことは聞くといい。』
エド様は咳き込んで誤魔化したようだ。
「では私から聞きたいことがあります。」
私はエド様に話しかけた。
「実は今、リザルト帝国にて怪しい令嬢が1人いまして。 魅了の魔法を使い、魔法使いたちを近づけさせない。 そして、未来は見渡せない。 表情も読み取れない。 心の奥は真っ黒という女性です。 何か心当たりはありますでしょうか。」
『うむ。 簡単じゃ。 それは「契約」しておるな。』
「契約ですか? 一体誰とですか?」
『魔法使いの可能性もある。 が、1番に考えられるのは魔物だ。』
やはりノア嬢と魔物は繋がっていたのだ。