あの大魔術師とは 5
にしてもここは不思議だ。
家に入る前は一般的な民家の大きさだったはずだが、中がだいぶ広く感じる。
玄関を潜ると店になっている。 店は薄暗く、明るすぎない、優しい電球が4つほどぶら下がっていた。 そして、様々な色や様々な大きさの瓶、乾燥させてある草、本、怪しい頭蓋骨、水晶… リザルト帝国でいう、薬屋と占い屋を合体させたような雰囲気である。 しかし、真ん中には紫色の上品な刺繍が刺してある、ソファベットがドン!と置かれていた。
そして私達が通された応接間。 外観からして、店のみの大きさだったような気がしたので、店の奥の応接間に通された時はびっくりした。
応接間は店の雰囲気とは違い、なかなかファンシーである。 まずは壁紙がピンク。 カーテンは白でなんだかレースが揺れていた。 白の猫足のテーブル、椅子が並んでおり、ここにも大きなソファベットがある。 こちらも白の猫足。 クッション部分はピンク色なので、この部屋はピンクと白に支配された部屋であろう。 所々にハートのクッション。 くまのぬいぐるみ。
甘すぎて吐き気がしそうな部屋である。
「リリー、師匠は?」
ハリーが可愛いお人形のような少女、リリーに訊ねる。
「うーん、私ね、ちゃんとお客さんが来るって伝えたのね。 でもね、釣りに行ってくる〜ってね、ふらふらしていっちゃったの。」
「はぁぁっ?? …お客様、申し訳ありません。 すぐに呼んでー」
その時店の方からベルの音と同時に、年配の女性と思わしき声がする。
「ごめんねー! 薬切らせちゃってーー! ハリーちゃーん、いつものちょーだーーい!」
「は、はい! お待ちくださいー!! …えっと、お客様、もう少しお待ちいただいても宜しいでしょうか?」
「いや、申し訳ないので、私達が主のものに行こう。 お嬢さん、どこへ釣りに行ったか教えてもらえるかな?」
「わかった! あのね、ここから西の方にある川だよ!! 師匠様は黒いロープを着てて、ふわふわして、ちょっと変だから分かると思う!」
「ありがとう、お嬢さん。 ニールサ、行こうか。」
俺たちは家を出て、少女が言っていた、西に向かって歩き出した。
川は近く、すぐに着くことができた。
そして、見渡すと黒い影があったので、近づく。
黒いロープを着た、後ろ姿の女性と思われる人が釣りをしていた。
空飛ぶ絨毯に寝転んで… そう、黒いのがふわふわしていたのだ。
「え、ちょっと、あれ、ヤバイっす。 空飛ぶ絨毯なんてかなりの魔力が必要っすよ… 釣りに使うなんて、頭おかし過ぎでしょ。 す、すみませーん!!」
ニールサがその女性に声をかけた。
女性はこちらを振り向く。
銀の肩まで伸びた、サラサラした髪が揺れる、美女。
「うわぁ、美人…」
「久しいな! ナナ!!!」