あの大魔術師とは 4
俺たちはユックスを出て、カヒミンへと旅立つ。
カヒミンへは1週間ほどかかる。 本当にナーハヤ大国の端っこにあるらしい。
カヒミンまでは乗り合わせ馬車を使い、時には歩き、時には空飛ぶ絨毯というものも、体験させてもらった。
ニールサ曰く、空飛ぶ絨毯は一般的らしい。 しかし、魔力をかなり消耗するとのことなので大きな川を渡る時くらいに使うとのこと。
カヒミンに近づくにつれ、人は少なくなっていき、家が少なくなっていき、自然が多くなってきた。
「…大佐長、どうやら、到着みたいっす。」
細い道、点々とした場所にある家、麦の畑。 奥には森もある。
こんな田舎に大魔術師がいるんだろうか不思議に思っていた。
「お待ちしておりました。お客様。」
俺達の後ろから声がしたので振り返ると、黒い執事の服を着た、12歳くらいの少年がいた。 燃えるような赤い、そして整えられた短い髪。 彫刻物のような整った顔立ち。 そんな少年が深々と私達に頭を下げていたのだ。 こんな田舎になんと不釣り合いな。
「お客様、私はハリー、18歳です。 じ ゅ う は ち です。 お迎えにあがりました。」
…この子、とてつもなく怒っているようだ。 心でも読めるのか…
「あ、じゃ、同い年っすね、よろしく! オレはニールサ・フェリーっす。」
「丁寧な挨拶、感謝します。 私はアルファド・ラシュザ。」
「存じ上げております。 では主が待っておりますので行きましょう。 この先の森は迷いの森。 迷ってしまえば永遠に出ることができないので案内させて戴きます。」
この執事は俺たちのことを知っているのか? どこかで会っただろうか?
俺達はハリーと名乗る彼の後をついていくしかないので、大人しく、後を歩く。
ハリーの言った通り、森は色んな方向へ道が続いていた。 ハリーは俺たちを「こちらです。」と丁寧に案内をして、20分ほどで森を抜けた。 そうすると小さな集落にたどり着く。
その中の一つの家に案内された。
ハリーは執事らしく扉を開けてくれ、中に通してくれる。
「あ、いらっしゃいませ。」
また1人の人間。 黒のドレスを着た、可愛らしい人形のような、白い長い髪の少女が私達に話しかける。 この子は10歳にも満たなく感じる。
「私はリリー。 うんうん。 思った通りのおじさん達がきた。」
お、おじさん…ショックを受けて、軽く目眩のする言葉。
「お嬢ちゃん、おじさんはひどいなー。 せめてボクはお兄さんにしとこ? こっちはおじさんでいいよ。 お嬢ちゃんからしたらおじさんの歳だと思うし。」
ニールサは俺の方を見て、少女に話しかける。 俺はその通りすぎて何も言えない。