あの憎き人間 3
「アりガト。 今日はドウした?」
「えぇ! 何度頼んでも予約が取れないのよ!! どうにかして欲しくて直接来たの! お金なら3倍…いや、5倍払ってもいいわ! 何ならうちの専属になって? バジアミン家は帝国一の金持ちよ? さ、最近なんて、男爵から侯爵になったよ? 分かる? どれだけバジアミン家がこの帝国に貢献しているかが。 私の娘なんて将来の王妃よ? 今のうちにコネを作っておいても貴方にはいいと思うわ。」
正直、ババア黙れって思った。
「あ、あのお客様…。」
「ぶ、不細工は黙ってなさい! たかが従業員が! 私は店主と話しているのが見えないの!?」
オレは話しかけただけで怒られたようだ。 確かにナナージュ様の呪いで不細工だが…くそ、ババアムカつく!!
お前だってガマガエルみたいな顔をしやがって!
「お客様、座ってお茶でも。」
ハリー君がダフネ夫人を落ち着かせて座らせる。
「お客様、誠に申し訳ないです。 父は最近人気過ぎて… 今は休憩時間…寝る間も惜しんで、皆さんを施術しているのです。 急にどうにかとか…専属とかだと…父が倒れて… ううっ。」
ハリー君がそういうとポケットからハンカチを取り出し、目元に当てた。
絶対泣き真似だと思う。
「え、えっと。 可愛い、僕、な、泣かなくても…!」
「邪魔をする!!」
急に思いっきり開く入り口のドア…
もう、このドア壊れるんじゃない? また嫌な予感…
姿を確認するとそこには第一騎士団の奴らが数人。 ほらな。
「また来たのか… あんたんとこの大佐長にはもうこの店に関わらないように言ってあるんだけどな。」
大佐長が奴らを睨みながら言う。
「うわっ、第三の大佐長…。 ち、違う! 今日はとある方をお連れしたんだ!!」
「えぇ、失礼します。 母がご迷惑をおかけ致しました。 申し訳ありません。」
そこにいたのは金色のふわふわした髪、見事なスタイルの女性…そう、あの、ノア・バジアミン嬢だ。