あのイケメン魔術師が 10
「私は仕方なくこの国へ来たけど…気になるじゃない? どうしてジュリエッタの借金があるのか。 誰が仕組んでいるのかも。」
「…好きにしろ。」
男たちを縛りながら、アルはため息ひとつついて、頭を抱えつつ、納得してくれた。
「さぁ、私は行くわ! あとよろしく!」
まだ夜は長い。 私はその場を去り、次は行きつけとなった、いつもの酒場へ行く。
「おっ、ミーオ! こっちだ!!」
そう、あの情報収集をして、ナナージュ嬢としての、とんでもない噂を聞いたこの酒場である。 あれから少しずつ通って、顔馴染みとなった。
店の宣伝をしていた時に声をかけてくれたおっさん…ブルーノさんと言う人とは仲良くなった。 行くといつもそばで酒を飲まされる仲だ。
「ミーオ! いつもより遅かったな! お前の店、忙しくないだろ?」
ブルーノさんはそう言って笑う。
「アぁ。 今日はショー見タ。ジュリと言う子、踊っテた。」
「おっ! ジュリちゃんを気に入るとは…ミーオも男だねぇ。 あの可愛さ、色っぽいスタイル。 そしてダンスからは知性も感じられる。 今はリザルト帝国一の踊り子といっても過言ではないぞ!」
「ナンか借金してルって言っテタ。」
「まぁそうやってお客さんに同情させてお金を取るって言う手法もあるからなぁ… リザルトの人間はそういうのに弱くてな。 まぁ、ジュリちゃんのところは本当なんだけど。」
「そうナノカ? マスター! コこに酒クれ!」
マスターに酒の入った瓶をもらい、ブルーノさんの空のグラスに注ぐ。
「おっ、分かってるな。 …実はな、ジュリちゃんは本名が、「ジュリエッタ・オファー」なんだよ。 オファー家の娘だな。 お父さんは第一騎士団大佐長であった。 なかなか堅物な人で、厳しい人だって聞いたことがある。 そして土地も管理していたんだが、やはり、第一の大佐長さんだ。 城に泊まることが多々あったらしい。 その間の悲劇だ。 何とジュリエッタ嬢さんが夜会に行っている間に屋敷が火事になったのだ。 奥様と使用人がたくさん亡くなってたって話。」
「…ソレがどウ借金に繋がル?」
「まぁ焦るなよ。 借金をしてたのは死んだ奥様の方だよ。 なんでも詐欺商人に「金が出る山がある」って騙されてな。 奥様が死んだ後に借金の精算に土地を取られたらしいんだよ。 二束三文でな。 オファー家はそういう商売ごとには疎かったってことだな。」
想像以上に酷い話であった。
彼女は何も責任がないのにただ借金を返しているだけという事実に怒りしか込み上げてこない。