あの大魔術師とは 1
『ガシュ歴47年205日。
ニールサ・フェリーが本日の記録係として書す。
本日、アルファド・ラシュザ率いる第三騎士団に王から命が届く。
最近何かと巷で話題の大魔術師を連れてこいとのこと。
その大魔術師は隣国ナーハヤ大国のどこかにおり、可愛いようなものを好み(僕みたいな?)、スライムのようだと聞いた。
この王からの命はきっと最近起きている魔物騒動のせいだと思われる。
その大魔術師は近年のナーハヤ大国の魔物選伐隊でなかなかの活躍をみせ、大魔術師と名乗りの許可を得たと言われているのである。
果たして、私たちの運命はいかに!!』
「ふぅ」
ニールサが一息つくと同時に、俺は思いっきり頭を叩く。
「い、痛いーー! た、大佐長、何するんですか!!」
「お前は記録係の仕事がちゃんとできないのか! 文章が全体的にだらしない!!」
俺、アルファド・ラシュザはニールサに雷と拳を落とす。
あの日の出来事から7年が経ち、俺は1つの部隊を任せられる大佐長となっていた。
そして、この阿呆な部下、ニールサ・フェリー第三騎士団二等騎士。 歳は18。 この歳で二等騎士まで登りあがるのは早い方なのだが、それには理由がある。
ニールサは隣国、ナーハヤ大国の出であり、ほんの少しの回復魔法が使えるのである。 ニールサによってリザルト帝国にも隣国の状態が見えてきたのである。
実は隣国、ナーハヤは7年前は出入りできるのは特別な商人だけであった。
しかし、先の魔物選抜隊により、ナーハヤの魔物が大方片付いた際、突然、人の出入りがある程度自由になった。 もちろん、通行許可証が必要だが、身分が証明できれば、旅行目的でも取得可能である。
「で、大佐長。 今回の大魔術師に会いに行くのは、大佐長とオレの2人だけなんですか??」
「そうだ。 これは極秘任務だからな。」
「国王も素直に大国の王を通してお願いすればいいんじゃないですか??」
「それが、出来ないんだよ。 7年前のナナージュ嬢の事件は知ってるな?」
「ええ。 ヤード王子が一方的な婚約破棄をして、その後、城の崩壊によって亡くなったと記録にありました。 悲惨な令嬢ですね。」
「…ここからは誰にも言うな。 そのナナージュ嬢の母君は隣国、ナーヤハ大国の王の妹君であったのだよ。」
「…うわぁ。 それは頼めませんよねぇ。」
「隣国に対しての我が帝国は罪ばかりなんだよ。 流石にあの王でもそのことはわかっている。」
「でも、なんで妹君が当時、リザルト帝国に嫁ぐことが出来たんでしょうね?」
「それは俺にも分からん。」
「大佐長、役に立たないっすね。」
俺はニールサの頭を思いっきり叩いた。