『ユグドラサス』
伊佳瑠兄さん視点。
角くん一年生夏。
「え、『ユグドラサス』を遊ぶんですか?」
ボドゲ会の帰り道、カドさんがぎょっとした顔で俺を見下ろした。
俺はそれに頷いてみせる。
「そう。先輩がメンバー集めてて。カドさん、良かったらどうです? プレイ時間読めないんで、無理にとは言わないですけど」
そういえば、ボドゲ会で出会う人はほとんどが年上だったから、ボドゲ会ではずっと敬語だった。そのままなんとなく、カドさん相手にも敬語で話していた。
相手が誰かによって態度を変えるのが面倒だったから、程度の理由だけど。それでも今となっては、敬語をやめるのも不自然だろうと思っている。それにもう、これで慣れてしまったし。
俺の提案に、カドさんはスマホを取り出して操作を始める。予定を確認しているらしい。
「興味はあるし、遊びたいんですけど……返事待ってもらって良いですか?」
カドさんが慎重な返事をするのも無理はない。
この『ユグドラサス』というボドゲは発表時に「プレイ時間が一日」という点で話題になった|超重量級《プレイ時間が非常に長い》ボドゲだ。ちなみに箱もやたらデカい。
先輩もいつ遊ぶかと悩んでいたらしい。
「返事は週末までで良いですよ。あ、高校生なんだし、親に怒られるようなことはしないでくださいね。誘っておいて俺が言うなって話だけど」
「いえ。誘ってもらえて嬉しいです。遊んでみたいとは思っていたんですよ、『ユグドラサス』。なんとか参加したいです。夏休み中ならなんとかなると思うし」
そう言って、カドさんは笑った。あの超重量級ボドゲを遊ぶのが、本気で楽しみらしい。
人のことは言えないけど、カドさんは相当なボドゲ好きだ。しかも、雑食の。軽量級から重量級まで、大喜利系からストラテジーまで、貪欲に遊びたがるし、実際に楽しそうに遊ぶ。
俺もどちらかと言えば雑食で割となんでも遊ぶ方だから、カドさんの傾向を好ましく思っていた。
それに、こういうときに声をかけやすい。誘って一緒に遊ぶなら、やっぱり楽しそうにしてくれる方が気分が良い。
「なんかすごいダイスタワーがあるんですよね」
「ああ、ダイスタワーの組み立てだけはやったって言ってましたよ。箱が大きい理由の何割かは、あのダイスタワーのせいだって」
「それも見るの楽しみです。場所をとるとしても、ダイスタワーってやっぱりテンション上がりますよね」
「まあ、そういうのはありますね。内容物良いと、やっぱりプレイ中楽しいですから」
そこから、今度は『ウィングスパン』のダイスタワーも良かっただとか、『エバーデール』のツリーも良かっただとか、『ツォルキン』の歯車が好きだとか、コンポーネントの話で盛り上がる。
カドさんとは気楽に、楽しく、こうやって会話できる。
多少の年の差はあるし、あと妹が関わってくると面倒くさい部分もあるけど、それでも俺がカドさんを好ましく思っているのも事実だ。
もしかしたら、友人、と言っても良い関係なのかもしれない。
まあ、カドさんがどう思っているかはわからないけれど。
『ユグドラサス』
・プレイ人数: 2〜4人
・参考年齢: 12歳以上
・プレイ時間: 1日(慣れたら人数×60分~)
『ユグドラサス』は一般販売は2021年9月でしたが、クラウドファンディングの返礼の配送は7月でした。兄さんの先輩は、クラファン組です。なので夏休み中に遊ぶことになりました。




