第4話 魔王、戦う?
めっちゃ久しぶりに書いた気がします(事実)
元々短い話の予定だったのであと2~3話くらいは続く予定です。
狩猟姫ユーキ、奴が来たら終わりだ。
誤魔化す?どうやって?魔王城の近くに隣接した村など気になるに決まっている。そしてあの狩猟姫は目ざとく獲物を見つけるだろう。あれはそういう女だ。
獲物を見つける嗅覚、獲物を捕らえる獰猛性、そして何より魔王である我を上回る膂力。我は魔力以外でかの狩猟姫に勝るものなど持ち合わせてはいない。
「我が国境まで出向く!狩猟姫を城に近付けるな!」
これが最善、のはずだ。何とか言いくるめてユーキにはお帰り願おう。
「へぇー?なんだい魔王様よぉ。つれねぇこと言うじゃないの」
突然背後から聞こえた声。不味い、不味いぞ。聞き覚えがある声だ。何でもう来てるんだ。落ち着け、落ち着くんだ我…。冷静に、冷静に対応しろ。
「しゅ…狩猟…ん、んん!あー…ユーキよ、よく来たな」
そこに居たのは正に今話の渦中に居た四天王、獣人族の狩猟姫。
一見すると細くしなやかな体躯でありながら筋肉で引き締まったその身体は正に狩人と呼ぶに相応しい。
短い体毛に虎模様の毛皮、虎の獣人かと見間違うがその実奴は猫の獣人なのである。
防具は身体の動きを邪魔しないように布と革で出来た質素な物なのだが、本来ユーキはその軽装すら必要無い。敵の攻撃を喰らった試しが無いのだ。
「なんだいなんだい?あたしが城に来ると何か不味いのかい?」
「い、いやなに、お前に任せた土地は強い人間が多いだろう?長い間留守にしてしまうと不味いんじゃあないのか?と、気になってなぁ、ははは」
「あんなのあたしの配下だけで十分さ」
「そ、そうか、流石は獣人族だな、はははは」
「でだなぁ、手土産でも…と思ったんだが、まだ用意は出来て無くてさ」
「そうか、気持ちだけ有難く受け取ろう」
「まぁそう言わないでくれよ、とりあえず今はこれだけでも受け取ってくれよ、なぁ」
そう言ってユーキが渡してきたものは破れた写真。写真に写る人物は首から下が破かれているようだった。…ていうかこれ、勇者のプロマイドじゃないか!
「おま…これ」
「ああ、次は本物の首、持ってくるからよ、期待しててくれよ、なぁ」
そう言って笑うユーキの顔は完全に我を見下していた。
「どこで…知ったんだ」
「どこでもねぇさ、ただよぉ…いきなりあんな命令が出されたら誰だって疑問におもんだろぉ。人間を襲うな…だったか?で、新しく出来た魔王城に来てみたら皆腑抜けてやがるじゃねぇか。聞けば皆可愛い可愛い勇者ちゃんにご執心ときたもんだ、むしろあたしが聞きたいねぇ、魔王城はどうしちまったんだぁ、なぁ?」
もはや…これまでか。
「勇者に手を出す事は…許さん」
「……へぇーぇ、理由を聞こうか」
「伝えていなかったのは悪かった。これは勇者飼い殺し計画なのだ。勇者にレベル上げさせず、力を覚醒させず、寿命で死んでもらう為の…作戦だ」
「そうかいそうかい、…反吐が出るねぇ」
「罵ってもらって構わないが、これは魔王たる我の命令だ。逆らう事は許さん」
「はぁー、そうかい。ならたった今よりあたしは四天王をやめてやるよ。あたしはただの一人の獣人さ。どこにも組みせずやりたいようにやらせてもらう」
「くっ!ならば我は魔王として、我に組みせぬ魔族に制裁を加えるまでだ!」
例えユーキの方が強くとも、我は勇者を守ってみせる!我がここで朽ち果てようとも、勇者だけは幸せに寿命で死んで貰わねばならない!
………ん?…え?我は…何を?
「くく、くははははは!魔王として、だぁ?鏡見てから言えよそれ!魔族を率いる王の顔じゃねぇぞ、完全に雌を守る雄の顔だぁ」
はぁ!?何を…え?そんな訳が無いだろう。我が?男として勇者を?はははは、無い無い。魔王たる我が?宿敵たる勇者を?いやいやいやいや、無いだろ。
勇者と一緒に居るとちょーっとドキドキしたり、格好良いとこ見せたくなったりはしてたけど…あれ?
「…我は、勇者が好きなのか?」
「あたしに聞くなし、はぁ…興が削がれた。今日は引いてやんよ。だがあたしは気が短い。明後日だ、明後日に村に攻め込む。明日一日の猶予をくれてやんよ。好きに使いなぁ」
そう言い残すとユーキは魔王城の門を出ていきこの場から立ち去っていった。
一日…か。どう使うべき…なんだろうな。
この日、我は魔王城の皆に一言だけ伝えた。
一言、狩猟姫に勇者の事が伝わった、と…だけ。
来ちゃいましたー。狩猟姫ユーキ。
さぁ、どうなりますやらー。
血なまぐさい事にはなりませんのでご安心を!(ネタバレ)