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踊る指先、動悸の加速と共に

感想お待ちしております!

 長い講義を終えたユウタロウ。多少風化したものの、取り巻きに対する怒りは消えなかった。トゥイッターを開き、保存しておいたブロックされたというスクショに「ブロックされてて草、こっちがブロってやろうって思ってた位だし別に気にしてねえけどw」という文章を添えて投稿した。

 気にしてないって、お前90分間そいつらのことばかり考えてただろ。

 思わず語り部が突っ込んでしまう程のわかりやすい見栄張りであったが、それだけでは止まらなかった。


「3人同時ってのがキモイな。まとまらないと俺に勝てないチキン共が」


「陰キャ極めすぎ、ネットいじめのつもりかよw」


「まあ全然どうでもいいんだけどな俺はw」


 怒涛のトゥイートラッシュである。この時点で更に5人のフォロワーにブロックされていたが、そんなユウタロウのラッシュを止めたのは、意外な人物であった。


「何かあったの?(´・_・`)」


 ゆきりんからのリプライである。ユウタロウの怒涛の不穏なトゥイートを彼女は心配に思ったのか、本人に直接リプライで問いかけてきたのだ。ユウタロウもいち早くそれに返信する。


「裏垢でいい?」


 ゆきりんはこれに応じ、裏アカウントでユウタロウは粗方説明をする。ゆきりんは所々でうんうんと反応する。決して彼を否定すること無く、ましてや持論を展開することも無い。ただそっと、寄り添うように耳を傾ける?というかリプライに目を通した。そんなゆきりんを相手にユウタロウの指先の動きは加速した。


「集団でブロックはやばいね。ソーゴさんもなんか言えばいいのにね」


 このリプライを最後に、会話は途絶えた。敢えてここで自分から終わらせることで、自身とゆきりんの関係の均衡を保とうとしたのだ。ただし、間違いなくユウタロウにとって彼女の存在は大きなものになっていた。


 今までゆきりんに対して「会話し過ぎると好きだと悟られるかもしれない」のと「常に絡まれる事によって自身の価値観は上がる」という感情が第1に働き、口調が多少変わりつつもユウタロウの方から彼女にリプライを送る事はあまりなかった。しかし、今回のソーゴらとの1件からか、ユウタロウの方からのアクションも増え始めていた。


 2週間程経つ頃には、ユウタロウのトゥイッター自己紹介欄にて「相方→@ゆきりん」と載せるという謎の主張を展開する程度にプライドのブレーキは緩まっていた。


 それと同時により一層強まるのがオタク文化の否定である。アニメだけに留まらず、とにかく世論的にオタクと形容されるであろう文化、様々なものを片っ端から否定するようになった。「俺はこいつらとは違う」精神にゆきりんという存在が加わる。それにより「俺はこいつらと違い、気持ち悪い文化には呑まれないんだ」という語りかけへと進化を遂げた。おめでとう。


 ゆきりんへの感情が強まっていく中、ユウタロウは少し気になることがあった。それはゆきりんとへんみ君の絡みが自分の次位に多いのではないか?というものであった。


 へんみ君とは、ユウタロウが自身の裏アカウントで彼をフォローする程には信頼を寄せているが、同時にかなりのアニメオタクである為、必然的にユウタロウに見下されている人物であった。いつからかはわからないが、ゆきりんとへんみ君も相互フォローだった事はユウタロウ自身も認知していた。


 もう一つ不可解な事があった。それはゆきりんが度々載せる自身の自撮り画像に対してのへんみ君のリプライが多いのではないか?ということであった。その内容も「普通に可愛い笑」「結婚しよ(なんちゃって)」という具合に、容姿を褒め称える様なものが多い。


「もしかしたら、へんみ君はゆきりんが好きなのか?」という疑念は日に日に増していった。


 その疑念が爆発するタイミングは意外と早いものであった。

 疑惑が浮上してから、ユウタロウはへんみ君のトゥイートをよく監視するようになっていた。今日も元気に彼のトゥイートを監視していた所、一つのトゥイートに、一気に動悸が加速する。


「ゆきりんちゃんってまじで可愛いよな、なんでトゥイッタラーなんだ?(困惑)」


 ユウタロウはダイレクトメッセージ(DM)ボタンをタップする。これは送りたいと思う本人と非公開で直接やり取りが出来るものである。彼の白くて細い手に再び血管が浮き出る。


「おいへんみ、お前ゆきりんにセクハラみたいなことすんのやめろや」


「え?普通に可愛いなって言ってるだけだけど…」


「普通に困ってるの分かんだろ、文体で察しろ」


「え?でもあの子皆に対しても割と同じように返してるような…」


「いやいや、みんなにセクハラみたいなことされて嫌がってるんだよなぁ…俺わかるし() てか次やめなかったらブロるからな?」


「ちょっとなんでそんなに怒ってるのか分からないけど気を付けるよ。」


 少し反抗的ではあったが、ユウタロウはこれを良しとした。


 良しとしたのも束の間、ユウタロウは再び血管を沸騰させる事になる…。


 TLに「いいねした人との出会いを語る」というハッシュタグが流行った。ユウタロウのフォロワー達もこれを使い、ネッ友達と懐かしさに浸り合う。ユウタロウ本人は勿論、この手のタグも「馴れ合い」と揶揄し、見下していた為不参加だったが、一つだけ注視しているものがあった。


 へんみ君もこのタグに便乗していたのだが、そのタグのいいね欄にはゆきりんがいたのだ。つまりへんみ君がゆきりんとの出会いを語るというユウタロウに取っては絶対に見逃せないものが迫っていた。


 震える指先で何度も画面を下にスクロールする。齧り付くようにTLを眺める中遂にその時は訪れた。


「ゆきりん 何となくで繋がったTL一の美少女笑 リア充してそう!こんな俺でも良かったらいつか会ってみたい!」


 血液が沸騰する。歯がガチガチと軋む。滝のように流れる脇汗。ユウタロウは修羅と化した。そんな彼に更に追い打ちがかかる。


「美少女笑 嬉しい!私も会いたい!」


 ゆきりんがこれに応答する。その瞬間、ユウタロウはDMボタンに指をねじ込む。


「へんみ、俺あれほど言ったよな?付きまとうなってよ。会いたいって何?舐めてんの?」


 ユウタロウの怒りのメッセージ。しかし、へんみ君はこれに動じることなく立ち向かう。


「ごめん、別に俺付きまとうとかそんなつもりないしいつも通り接しただけだけど? お前もよく会いたいって言ってるじゃん。そもそもお前に俺のトゥイートを制限される意味もわからないよ、ゆきりんはお前の彼女じゃないだろ?なんでお前がそこまで言う必要があるの?」


「付きまとってるかどうかはお前が判断することじゃないだろ馬鹿か?」


「じゃあお前はゆきりんから相談受けてたのか?それなら謝るけど」


「だから文体で察しろって言ってるだろ」


「それ理由にならなくない?お前が直接ゆきりんから相談受けたわけじゃないでしょ?なんで口出しするの?」


 返す言葉のないユウタロウ。叩きつけるようにブロックボタンをタップする。完全に論破されてしまった為、残された手段はこれしか無かったのである。


元々はユウタロウも裏アカウントでフォローする程の信頼を寄せていたへんみ君。しかしゆきりんへの感情の暴走が、たった一日で両者の仲を引き裂く引き金を抜くことになったのだ。


裏アカウントでもへんみ君をブロックした後にお約束の如く吐き出す。誰も自分を否定しないトゥルーワールドである。


「ストーカー野郎が、刃向かってきやがって。あーイラつく」


  フッキーが擁護し、マズレモンが鵜呑みにする。ゆきりんは私は大丈夫だよ?とだけ反応していた。


 小さな小さなユウタロウ肯定ワールドの中で彼はまた自尊心を癒していく。

次回もお楽しみに!

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