181話 羽虫の飛び方(ネネ視点)
馬車の外が明るかった理由はすぐに分かりました。
ここはトンネルの出口?から少し奥へ入った所でそのトンネルの床や天井には所狭しと光の魔石が埋め込まれていてトンネル内を明るく照らしていました。
まぁ、そのせいでトンネルの出口付近には光に集まってきた大量の羽虫が飛んでるけど…。
これはトンネルの入り口に扉を付けるとかの対応をした方がいいと思います。
それにしても、お兄さん達はどこに行ったのでしょう?
この馬車には乗っていなかったし、もう1台の方の馬車の中かな?
そう思って私はおもむろにもう一台の方の馬車に近づき、その扉をそっと開け光の魔石をかざして………。
「………。」
………数秒間固まった後、その扉をそっと閉め静かに馬車から離れました。
「見てはいけない物を見てしまいました…。」
馬車の中に寝ていたのは御者の男性2人でした。
はい、その2人が寝ていたんです。
その…抱き合ったまま…。
よほど寝相が悪かったのか…はたまた、そういう趣味の人達なのかは分かりませんが…。
…とりあえずキモチワルイ…。
「…うん、何も見なかった事にしましょう。
私は馬車を覗いてないし、今見た物は夢です!!」
まぁ、気を取り直してお兄さんを探しましょう、ここにいなかったという事はトンネルのもう少し奥でしょうか?入り口付近は羽虫がものすごいですし…。
しかし、少し奥へ進んでみましたが人っ子一人見つからなかったので、方を落としてトボトボと仕方なく来た道を戻ります。
「こんな事なら先に入り口の方を調べれば良かった…。」
そして、馬車の所まで戻って来た時、何処からともなく、いい匂いが立ち込めてきました。
その匂いに導かれるままトンネルの出口まで進んでいくと。
「あっ、戻って来ましたわね。もうすぐ朝ごはんができますわよ。」
どうやら、リッカさんがトンネルの外で朝ごはんを作っていたようです。
外はいつの間にか、太陽が顔を出し明るくなっていました。
2人の御者さん達もそれをお手伝いしていて、2人共、特に変わった様子はありません。
やっぱりあれは夢だったのでしょう。
なかなか衝撃的な夢でした。
「あれ?帰って来てたんだ、馬車の中にいなかったから心配したよ。」
どうやら入れ違いになってしまったようです。でも、心配してくれるのは嬉しいです。
「あっ、お兄さん、おはようございます。」
「うん、おはよう。」
朝からお兄さんの素敵な笑顔が見れました、こっちは夢じゃないですね。
今日はいい事がありそうです。