176話 人影の探し方
大変お待たせ致しました。
私達は今、トンネルを抜けた先の町…町の入り口にあった今にも朽ち果てそうな立て看板には『ようこそヒートへ』と書いてあったので、たぶんここはヒートです。
「長閑な所ですね。」
「アリスさん、これは長閑なのではなく、ただのド田舎ですわ。」
リッカちゃんにすかさずツッコミを貰いました。
確かに、この町に入ってから人っ子一人見かけていません。
その代わりに柵の向こうには、たくさんの牛さんとかお馬さんとか、あとは羊さん達が広い草原で一生懸命草を食べています。
「それにしても、ここは暑いですわね…。」
「ほんとですね、しかも照り付ける陽射しを遮る木陰も、吹き付ける熱風を遮る建物も何もないですね…。なんでこんなに暑いんでしょう?」
「たぶんフェーン現象が起きてるんだよ。」
「「フェーン現象?」ですの?」
フェーン現象ですか?聞いた事がありませんね?
「確証はないけど、山の方から風が吹いてるからたぶんそうじゃないかな?」
よく分かりませんが、山の方から風が吹くと暑くなるって事ですね?
「それにしても、この町の人達はいったい何処にいるんでしょう?」
「確かに不思議ですわね?これだけの数の家畜がいるのに誰一人として見かけませんわね?」
「暑いから皆さん家の中に閉じ籠っているんでしょうか?」
「アリスさん?その閉じ籠る為の家は何処にあるんですの?」
「…えっ?」
リッカちゃんにそう言われ、私は辺りを見回します、しかし近くに建物らしい物は見当たりません。
私は魔法で視力を強化し少し遠くの方も探します。
これだけの家畜がいるのですから誰もいないはずがありません!
「あっ!ありました!きっとあそこです!!」
私が指差す先には小さな小屋があります。
「…あの中に人がいるって言うんですの?」
「…流石にちょっと無理があると思うけど…。」
「ですよね~。」
「まぁ、他に手がかりもないし、とにかく行ってみよう。」
「ですわね。」
こうして小屋に向かって歩く事5分。
小さく見えていた小屋は思いの外奥行きがあり想定の3倍程大きかったものの、壁が金網でできていて人が住むような建物ではありませんでした。
そして、金網ごしに中を覗き込み、そこにいたものは…。
『コケコー』
「鳥さん?」
「鶏だよね?」
「ですわね。」
なんとニワトリさんでした。
それにしても…本当にこの町は家畜しかいませんね…。
「あれ?入り口の所に何かありますよ?」
「本当だ、行ってみよう」
「こ、これは!!」
なんと、ニワトリ小屋の入り口は無人の販売所みたいになっていて、そこにはこう書かれていました。
『卵10個 銀貨1枚』『チーズ1塊 銀貨3枚』
「これは安いですわ!お兄様、買い占めますわよ!!」
「え!?」
こうして、リッカちゃんによる、お買い物が始まってしまいました。
連休中に3回くらいは更新したい(希望)