155話 オーガの倒し方
サクッと
翌日…
昨日のうちに準備を済ませ、きっちりと3泊というフラグも回収し、宿を引き払った私達は、早朝から土砂崩れのあった場所へと向かって歩いています。
…普通の人の2倍くらいのペースで…。
特に急ぐ必要はないのですが、道中に何もないので自然と速足になってしまっています。
そのまま暗くなる前まで進んで夜営。
という名の自宅
これを2日繰り返し、3日目の朝。
現場は馬車で2日程の距離らしいので、そろそろ目的地が見える頃だと思います。
「どうやら、あそこのよですわね。」
歩きながらリッカちゃんが指差す先には、大きく抉れた山肌が見えます。
「あっ!ほんとです!それじゃ急ぎましょう!」
そう言って、私は走り出しました。
「「……なんで急ぐの??」」
走り始めて数分、土砂崩れの現場にかなり近づいた時、私は誰かの声が聞こえた気がして立ち止まりました。
「あれ?」
不審に思いながらも、私は耳を済ませながら辺りを見回します。
「どうかした?」
「いえ、誰かの声がしたと思ったんですけど…。」
「誰か?」
「……何も聞こえませんわよ?」
「おかしいですね…。確かに聞こえたと思ったんですが…。」
「気になるなら探知魔法でも使ってみたら?」
「それもそうですね。」
私は探知魔法を使い辺りを探ります…。
確かあっちの方にから…
「………いました。あっちです!」
あっちに誰かを見つけましたが。どうやら、その誰かは数頭の魔物に囲まれているみたいです。最近増えているというオーガでしょうか?
でも、どちらにもあまり動きがありませんね?もしかして、もう死んでいるのでしょうか?
私達は探知魔法を頼りに魔物の集まる場所にゆっくりと近づきます。そして、近づくにつれ次第に聞こえるようになる「助けて」の声。
しかし、その声は弱々しく、あまり遠くには聞こえそうにありません。
そして、魔物を視認。
予想通りオーガですね。そのオーガが3頭で囲んで木の上を見上げています、さらに1頭はその木を登ろうとしていますが、木の上にいる魔族の兵士と思われる人が、必死の抵抗でそれを阻止しようと木の枝を投げたり、葉っぱを投げたりして追い払おうとしていますが、残念ながらあまり効果が出ていないように見えます…。
このままでは、あの人がオーガに食べられてしまうのは時間の問題でしょう。
と、思っていたら突然オーガがこちらに向かって走って来ました。
どうやらオーガは気配察知能力が高いようで、私達は草むらに身を隠していたのですが、気付かれてしまったようです。
「あら?気付かれてしまったようですわね?」
「みたいだね。それじゃ、1人1頭ね。」
「はーい」
「分かりましたわ」
こうなってしまったら仕方ありません。
サクッと倒してしましょう。
サクッと。
「すまない、助かったよ。オーガが君達の方に向かった時はどうなるかと思ったが…皆さん見かけによらず、お強いんですね。」
私達がオーガを倒すと、木の上からよじよじと降りてきた兵士さんが駆け寄ってきました。
「これでも一応(Aランクの)冒険者ですからね。そんな事より、あなたはこんな所でいったい何をしていたんですか?」
「あぁ、この間の嵐で街道が土砂崩れで寸断されたのは知っているだろ?それで、各ギルドに依頼されている、復旧作業の依頼を受けた人の監督と言うか…監視と言うか…をする為に2日前に魔王様からの依頼でここまでやって来たんだ。」
2日前にここに着いたという事は、魔王の依頼を受けたのはだいたい6日前くらいでしょうか?
「それなのに、ギルドの依頼を受けた人は誰も来ないし、ようやく誰か来たと思ったらオーガだしで散々な目に遭ったよ…。」
要するに貧乏くじってやつですね…御愁傷様です。
「それで、一応聞いておくけど…君達は依頼を受けた冒険者かい?」
うーん?どうなんでしょう?一応は(トンネル工事の)依頼を受けた冒険者である事に間違いはないですけど…。
「残念ですが土砂崩れの復旧依頼を受けた冒険者ではありませんわね。そして、あの依頼を受ける人がいるとは思えませんわね。」
「えっ?それはどうしてだい?」
「大変で報酬が安いからですわ。」
リッカちゃんはギルドが出していた依頼の詳細を兵士さんに話しています。
それにしても、よく事細かに内容を覚えていますね…私なんか報酬額すら覚えていませんよ?
「…という訳ですわ。」
「…確かに、その内容じゃ誰も依頼を受けてくれるとは思えないな…。」
兵士さんは、ガッカリとした表情でうつむいてしまいました。
次回、24日はお休みします。(たぶん)