149話 金貨の賭け方
お兄ちゃんによって、宿の外に締め出された私達はそのまま湖の畔へとやって来ました。
ちなみに私達というのは、私と魔王のドリル?の他には、お兄ちゃんとリッカちゃん、だけではなく宿の従業員の皆さんと、騒ぎを嗅ぎ付けた近隣の皆さんがかなりの数で見物に来ています。
更に、誰が始めたのか、私と魔王の戦いが賭け事の対象となっているらしく、どちらが勝つのかを皆さんが言い争っています。
…なぜこうなった…。
「魔王と人間の女の子の喧嘩がだよー、現在のオッズは…魔王が1,2倍、女の子の方は225,7倍だ。」
「この戦いで魔王が1,2倍?女の子に懸ける奴が居たのか?」
「居たから賭けが成り立ってるんだよ。それよりお前はどうするんだ?」
「当然魔王に金貨100枚…と言いたい所だが、あいにく手持ちが少なくてな…金貨3枚だ。」
それにしても、220倍って…私に懸けた人が少な過ぎませんかね…。
「では、私が金貨100枚出しますわ!」
「おっ、お嬢ちゃんも買うのか?でも金貨100枚も大丈夫か?」
ちょっと!リッカちゃんまで、なに参加してるんですか!?
「勿論ですわ。」
そう言って、おじさんに金貨の入った袋を渡しています。
「えーと…本当に100枚あるな…まぁ、楽に金貨が増えるだろうから当然か。それじゃ、魔王に金貨100枚で…。」
「何を言ってるんですの?女の子の方に金貨100枚ですわよ?」
「え?」
「「「「「えぇぇぇぇ!!」」」」」
「お、おい。いくらなんでも、それは止めておいた方が…。」
「あら、そうですの?でも、あの魔王はそんなに強くは見えないですわよ?」
「いやいや、人は見かけによらないぞ?確かにあの魔王は、まだ子供で先代の魔王程の強さはないだろうが、それでも魔王は魔王だ、見た目通り力はそこまでではないが魔法の威力が桁違いだ、その力だって、一般人の普通の女の子よりは強いだろう?」
これで、見た目より強かろうが弱かろうが、魔王に負けられなくなってしまいましたね。
まぁ、最初から負けるつもりなんてありませんんけどね!
ケーキ泥棒の魔王なんてコテンパンのケチョンケチョンにして、お尻ペンペンしてやりますよ!!
「そろそろ始めるぞ。」
どこの誰かも知らないおじさんが、そんな事を言い出します、どうやら審判をしてくれるみたいです。
「2人共準備はいいか?」
準備もなにも、こっちが待ってたんですけど…
主にどっちにどれだけ懸けるかのを待つために…。
「始め!」
審判おじさんの掛け声と共に、魔王が無詠唱でファイヤーボールを飛ばしてきました。
速いですね、流石は魔王と言われるだけの事はあります。
それに対して、私はシールド魔法を斜めに張り、ファイヤーボールを受け流します。
そのままファイヤーボールは湖の中に突っ込み水蒸気爆発を引き起こしました。
魔王は突然の水蒸気爆発に驚いたような顔をしています。
「まさか…俺のファイヤーボールが弾かれただと!?」
…どうやら魔王は水蒸気爆発に驚いたのではなく、私のシールド魔法に驚いていたようです…。
「今度はこちらから行きます!」
私が使う魔法は魔王が使ったのと同じ…ように見えるファイヤーボールです。といっても同じなのは見た目だけで、ファイヤーボールの中には、真っ赤に熱された拳大の石が仕込まれています。
これならシールド魔法で正面から受け止めた場合、シールドを貫通できる可能性が上がります。
私に致死性のある攻撃をしてきたという事は、たとえ当たり処が悪く、これで殺されてしまっても文句は言えないでしょうしね。
まぁ、死人に口無し、殺せば本人からは文句なんて言われないですけどね。
「なっ、無詠唱だと!くっ、魔力障壁!」
私が放ったファイヤーボールは魔王が張ったシールドに阻まれました。
『パリン』『ドスッ』「ぐっ…。」
が、熱された石の方は多少威力が下がったもののシールドを貫通し慌てて腕で防御したものの、魔王に多少のダメージを与えたようです。
普通の人間なら骨折していてもおかしくはない威力だったと思うのですが、骨が折れた様子はありません、これは単に元の体のスペックの問題でしょう。
「くっ。………ヒール!」
魔王は何やら小声で詠唱した後、回復魔法を唱えました。
どうやら、この程度のダメージではすぐに回復されてしまうようです。
「この野郎、卑怯な手を使いやがって…。」
「それは褒め言葉として受け取っておきますね。」
「もう許さない!今度は本気で行くぞ!!」
どうやら、今までは本気ではなかったようです。
「では、こちらも本気で殺らせてもらいますね。」
死人に口なし:死んだ者に無実の罪を着せても、何の釈明もできない事のたとえ。
皆さんは間違った意味で使わないようにしてくださいね。