141話 招き猫の太り方
八百屋のおじさんにオーク2頭を渡し、お店の商品を全て受け取った私達は、おじさんに教えて貰った宿屋に向かっています。
宿は観光客に特に人気のある所だそうで、少々値段は張りますが、湖を一望できる広いお部屋があるそうです。どんな所なのか楽しみですね。
「ところでリッカちゃん、八百屋のおじさんにオークを渡したのは何のためですか?何か理由があるんじゃないですか?」
「別に、大した理由はないですわよ?ただ、良いお話を聞けたので、お礼にと思っただけですわ。」
「え~、そうなんですか?」
リッカちゃんがそう言うのであれば、これ以上追及するのは止めておきましょう。…何か裏はありそうですが…。
そうこうしている間に、どうやら教えて貰った宿屋に着いたようです。
宿屋は若干古めかしいものの、きちんと管理が行き届いているらしく、綺麗に見えました。
私達が中に入ると、出迎えてくれたのは、毛づやが良くイケメンではあるものの、残念な感じのデブデブの…いえ、貫禄のある体格をした虎猫さんでした。堂々と玄関の真ん中で寝ているので、これは招き猫でしょう。
すると、その猫さんがミミをピクピクして鼻をヒクヒクさせると、丸い目をパッチリと開き、ものすごい勢い…に見えるスピードで私に飛び掛か…ろうとしましたが、ジャンプが足りず、更にそのまま着地に失敗し、私の足元にヘッドスライディングしてきました。
しかし、猫さんは諦めずに私の足をよじ登ろうとしますが、爪を切られている為か、それとも爪磨ぎをサボっているのか…はたまた私のワンピースの性能故なのかは分かりませんが、爪を立てても、よじ登る事はできませんでした。
どうしたんでしょう?抱っこされたいのでしょうか?
そう思った私は、猫さんを抱き上げます。
「うぅ…重い…。」
私が猫さんを抱き上げた所、猫さんは私の肩に手を…じゃなくて前足をかけ、フードの中にいるリボンちゃんを覗き込みました。
なるほど…リボンちゃんが気になっていたから、私の足をよじ登ろうとしてたんですね。
それにしても、よくリボンちゃんがフードの中にいるのが分かりましたね?
猫さんが私のフードの中にいるリボンちゃんを覗いていると、リボンちゃんは猫さんに向けて猫パンチを繰り出しました。
パンチは猫さんにクリーンヒットし、バランスを崩した猫さんは私の肩から落っこちてしまいました。そして、見事に着地に失敗してひっくり返っていました…。
「あらら…友達にはなれませんでしたか?」
すると、そう言いながら現れたのは1人の女の子でした。格好からすると、おそらくこの宿の人でしょう。
「こんばんは、お友達って?」
「あなたのフード中に、いるのでしょう?」
「あぁ、そう言う事ですか。」
私はフードの中にいるリボンちゃんを取り出します。
「ごめんなさいね、うちのデブは女の子がいると見境無いから…。」
そう言いながら、女の子はリボンちゃんの頭を撫でています。
それで、リボンちゃんに気が付いた猫さんは私をよじ登ろうとしてたんですね。でも、それにしてもデブは酷いと思います…。
私は、リボンちゃんを床に下ろすと、着地に失敗してひっくり返っていた猫さんが起き上がり、リボンちゃんの所にやって来て「にゃーにゃー」言っていますが、リボンちゃんはまるで相手にしていません。
残念ですが猫さんの恋が実る事は無さそうです。もっとダイエットしてから再挑戦してもらう事にしましょう。
まぁ、今は猫さんの事は一旦置いておいて、本題に入りましょう。
「あの、3人部屋1つ空いてますか?」
「あら、お客様だったんですね、これは失礼しました。はい、3人部屋は1泊金貨2枚です、何泊のご予定ですか?」
金貨2枚、八百屋のおじさんが言ったように、確かに少し高いですが、今の私達には問題ありませんね。
「はい、大丈夫です!期間は、えーと…。」
「とりあえず3泊でお願いしますわ。」
と、私の代わりにリッカちゃんが答えました。
3泊で何かあるんでしょうか?これはやはりフラグなんですかね?
「分かりました。では、お部屋にご案内致します。」
私達は、お部屋に案内する女の子の後を付いていきます。
そして、リボンちゃんが私達の後ろから付いてきます。
更に、その後から先程の猫さんが付いてきているのですが、少し歩いただけなのに息切れをしています…。これは本格的にダイエットした方が良いんじゃないでしょうか…。少し心配になります。
「お部屋はこちらになります、それではごゆっくりどうぞ。」
女の子に案内されて、私達は部屋の中に入りました。
コロナのせいで皆さん連休中暇なんだから、小説書いてる人には休まず頑張って貰いたいよね…。