125話 案山子の倒し方
「ごちそうさまでした」
カレーを堪能した私は、お腹を擦りながら満腹をアピールします。
あまりの美味しさに、おかわりまでしてしまいましたからね。
決して、私が食いしん坊な訳ではないです。
ところで料理勝負の方はどうなったんでしょうか?
まさか、この後またカレーが出てきたりは…しないですよね?
調子に乗っておかわりをした事が仇となったり…しないですよね!?
まぁ、皆さんの様子を見る感じでは、もう1回カレーが出てくる感じではありませんね。
だとすると、勝負の結果がどうなったのかが気になりますが…。
まぁ、でもこの味付けなら、このカレーを作ったのはリッカちゃんだと思います。
なぜかって?
それは、このカレーがカレーなのに全く辛くなかったからです、普通に作れば多少なりとも辛くなるはずなので、この味付けはリッカちゃん以外あり得ません。
でも、だとするとアイリちゃんはカレーを作ってないのでしょうか?
まぁ、食べる方としては、同じ時間に同じ物を持ってこられても困りますけど…。
「では、皆さん食べ終わったようですし。片付けは私とお兄様に任せて、アリスさんとアイリさんは魔法の勝負を着けるのはどうでしょう?」
「えっ?俺も?」
「当然ですわ」
リッカちゃんは、さりげなくお兄ちゃんと二人っきりになろうとしてますね…。
「アイリ、魔法覚えられたの?」
「うん!いっぱい練習したもん!」
「そうか、それは是非見せてもらわないとな!」
と、言う事で。私達4人は庭に移動してました。
そこで、アイリさんのお父さんが、木で簡単に作ったハリボテに、アイリさんのお母さんが土魔法で補強した、妙にリアリティーがある案山子?ができあがりました。
…夜中に突然現れたら気絶しそうな顔をしていますね…。
どうやら、この案山子が今回の的のようです。
思いっきりやって壊しても、後腐れが無いようにとの配慮でしょうか?
「じゃぁ、先ずは私からいきますね」
と言って案山子と対峙するアイリちゃん。
なんだか自信がありそうに見えます。
まぁ、お兄ちゃんに魔法を教わっているので、当然と言えば当然なんですけど…。
でも、結局お兄ちゃんに泣きついたと言う事は、エルフの凄い魔法は覚えられなかったようですね。
そして、アイリちゃんが構えて…
「死ねー!」
と言って風の刃を飛ばしました。
…どうでもいい事なんですが、案山子は死んでいる…と言うか生き物ではないのですが…。
私の疑問を無視してアイリちゃんの風の刃が案山子を直撃!
案山子の首を真っ二つにして、後ろの塀に切れ目を付けて止まりました。
「やったー、大成功!!」
アイリちゃんは飛び跳ねて喜んでいます。
「「………。」」
そして、口を大きくて開けて唖然としている人が2人…
誰とは言いませんが…。
まぁ、それはともかく今度は私の番です。
「それじゃ、次は私が殺りますね。」
今のアイリちゃんの魔法を見た感じでは、そこまで強力な魔法は、まだお兄ちゃんに教わっていないみたいです。
これなら問題なく勝てそうなので、あまり辺りを壊さないようにセーブした魔法を使う事にしましょう。せっかく教わった『雑魚B連打』とか言う魔法は、次の機会に取っておきましょう。
私は、円盤状にシールド魔法を作り、そのまま明後日の方向に飛ばします。
「どこに向かって飛ばしてるんですか?これなら私の勝ちですね!」
アイリちゃんは上空に高々と上がったシールドを見ながら、そんな事を言っていますが、私の魔法はこれからです。
私のシールドは放物線を描きながら10メートル程の高さまで上がり、一瞬停止した後、一直線に案山子に向かって突き刺さり、胴体を斜めに切断、そのまま地面に直撃し地面に細長く深い穴を開けました。
そして、案山子の胴体はゆっくりとスライドしながら地面に落ちました。
「どうですか?」
私がドヤ顔で振り替えると、口を開けて唖然としている人が1名増えていました…。
翌日…
「「「お世話になりましたー」」」
「気を付けてね、絶対に魔王を倒してね!」
いや、魔王を倒す予定はないですよ?
…ないですよね?
「うぅ…私も行きたい!!荷物持ちでもいいから!」
「荷物持ちは間に合ってますわよ?だいたいあなたはアイテムボックスが使えないでしょう?」
「それは、これから覚えるもん!」
アイリちゃんはそう言ってますが、昨日の夜に家族会議が行われ、冒険の旅はもう少し魔法が上達してから、と言う事になったようです。
まぁ、その時にお父さんが泣きながら、「行かないで」と止めたとか止めなかったとか…。
そして、そのお父さんは仕事でいませんが…。
「それじゃ、行ってきます」
「やだー、私も行くー!」
そして、私達は再び北へ向かって歩き出しました。アイリちゃんは、お母さんに捕まってじたばたしていました。