122話 全力での走り方
「アリスさん、起きなさい。」
ゆっさゆっさ
「うーん…。」
いったい誰ですか?私の安眠を妨害するのは…。
「おはようございますですわ、アリスさん」
「なんだ、リッカちゃんですか…おやすみなさい…。」
「ちょっと!私だと分かった途端に、なんでまた寝るんですか!起きなさい!」
『むぎゅぅ…』
「痛い!痛いですー!」
私のほっぺたを引っ張らないで下さい!!
「おはようございますですわ」
「もう、なんなんですか、こんな朝早くから。」
「朝早くって…もうお昼を過ぎてますわよ?」
「………えっ?」
私は慌てて窓の外を見ます、外はよく晴れていて絶好のお洗濯日和みたいです。
…じゃなくて!
「もう!なんでもっと早く起こしてくれないんですか!」
「私も、たった今帰って来た所ですわ。それなのにお兄様はいないし、アリスさんはよだれを垂らしながら暢気に寝てるし。」
「えっ!?」
私は慌てて口の回りを黒猫の腕で拭きます。
「ちょっと!誰がそのパジャマを洗濯すると思ってるんですの!!」
「えっ?でも、アイテムボックスに入れたら勝手に綺麗に…」
「気分の問題ですわ!それに、お日様のいい匂いがした方がお兄様に抱っこされて寝れる可能性が高いじゃないんですのよ。」
「なんですと!!」
ふむふむ、これはいい事を聞きました。
しかし、リッカちゃんは、『しまった』っと言うような顔をしています。
「それで、お兄様はどこですの?」
「えっと…トイレ……ではないですよね?」
「玄関に、お兄様の靴が有りませんでしたわ」
と、言われても、私も行き先は聞いていません。
「私も分からないですね、他の人に聞いてみては?」
「なんで一緒に寝ていたのに、出ていった事も分からないんですの…。」
そんな事言われても、気が付かなかったのですから仕方ないじゃないですか。
という訳で、アイリちゃんのお母さんに聞いてみる事にします。
「お兄さんですか?さぁ、私も昼過ぎまで寝ていたから分からないわねぇ…
そう言えばアイリもいないんだけど、どこに行ったのかしら?」
どうやら、お母さん知らないようです。
そして、アイリちゃんもいないみたいですね。
「これは、2人でお出かけしたと見て間違いありませんわね。」
「2人で?まっ、まさかデートですか!!」
「たぶん。いえ、そうに違いありませんわ!」
お兄ちゃんと2人でデートなんてずるいです。
「それは大変です!すぐに探しに行きましょう!」
「そうですわね!事態は一刻を争いますわ!」
そして、外に飛び出した私達は全力で探知魔法を使います。
「アリスさんはこっち側をお願いします、私はこっちを探りますわ!」
「わかりました」
こうして左右に別れ探知魔法で探っていると。
「…見つけましたわ、やっぱり2人で一緒にいますわね!」
どうやらリッカちゃんが2人を見つけたようです。
「では、早速向かいましょう!」
「ですわね!」
そして、私達はお兄ちゃんの元へ走り出しました。……全力で…。
5分後…
民間の屋根づたいに、真っ直ぐお兄ちゃんの元へ向かう私達は、町門を飛び越え、草原を突っ切り、森の中へ入ろうかと言う所で、木の陰からアイリちゃんと手を繋ぎながら出くる、お兄ちゃんが現れました。
全力で前を走っていたリッカちゃんは、木の陰から急に飛び出してきたお兄ちゃんを避ける事が出来ずにそのまま激突…
…いえ、あれは抱き付いただけですね…きっと。
「2人共どうしたの?」
「どうしたの?じゃ、ありませんわ!お兄様!こんな人気のない森の中で何をしていたんですの!?」
「え?何って、アイリちゃんに魔法を…。」
「だめですー!それは言わないでくださいぃ-!」
アイリちゃんは慌ててお兄ちゃんの口を塞ごうとしますが、身長が足りず、お兄ちゃんに抱き付く感じになってしまいました。
「ちょっと、アイリさん!いつの間にお兄様とそんな仲になったんですの!?」
「え?………ちちち、違いますよ!誤解です!!」
「いいから、ちょっとこっちに来なさい!」
『むぎゅぅ…』
「痛いでふー、ほっぺたをひっぱぁらないで~」
そのまま、アイリちゃんが、リッカちゃんに連れて行かれてしまいました…。
「「………。」」
「何があったの?」
「朝起きたらお兄ちゃんが居なかったので、急いで探しに来たんです。」
「それだけ?…でも、急いで来たなら、起きたのは朝ではなく昼なんじゃ…」
いいんですよ!そんな事はどうでも!!
そして、帰りは4人で普通のペースで歩いて帰りました。
もちろんリッカちゃんは、お兄ちゃんから一時たりとも離れようとせず、お兄ちゃんにベッタリとくっついて歩いていましたが…。
まぁ、私も人の事は言えないんですけどね!!
祝100評価
(書いてみるもんですねw)