120話 ジャガイモの斬り方(アイリ視点)
カレーは、後は時々混ぜていれば出来上がる、と言う事なので。
カレーはお父さんに任せて、今度はお母さんに魔法を教えて貰う事にします。
お母さんは、庭で洗濯物を干していました。
「お母さんお母さん!」
「ん?どうしたのアイリ?」
「魔法を教えて下さい!」
「魔法?アイリは、お父さんに料理を教わってたんじゃなかったの」
「はい!でも、もう覚ました!」
「そうなの!?それはすごいわね!」
「そうですか?」
野菜を切って煮るだけでしたけど?
「それで、アイリはどんな魔法が使いたいの?」
「えっ?えーと…。」
何も考えてませんでした。
と、その時。
「おーい!カレーができたぞー!」
と、家の中からお父さんの声がしました。
同時に美味しそうな匂いも…。
「それじゃ、魔法はお昼食べてからね」
「うん、わかった!」
とりあえず、先に腹ごしらえする事にしましょう。腹が減ってはなんとやらです。
という事で、お昼は私が作ったカレーです。
お兄さん達は、何処かにお出かけしているので今日のお昼は3人です。
「このカレー美味しいわね。もしかしたらアイリは料理の才能があるんじゃない?」
「えへへ~、私が作ったんですから美味しいのは当然です!」
「お前はタマネギを剥いただけだろ?」
「お父さん、何を言ってるんですか?ちゃんとジャガイモも切ったじゃないですか?」
「…そうだな、確かに斬ったな…。」
そして、昼食を終え。今度こそ魔法の練習です。
「それで、どんな魔法を使いたいか決まった?」
「はい!とりあえず火の魔法を教えて下さい!」
私が選んだのは火魔法です、なぜかと聞かれると困りますが、なんとなく最初に覚えるのは火魔法のイメージがあります。
この前に読んでもらった本の主人公も、最初は火の魔法を覚えてましたし。
「火の魔法ね、分かったわ。火魔法は料理に使ったり、明かりを灯したりするのにも使えるから便利よ。」
なんか私の思っていたイメージとはちょっと…いえ、だいぶ違いますね…。
もっと派手で、この辺り一面を焼き付くすような凄い魔法を想像していたのですが…。
「アイリ、どうかした?」
私が考え事をしていると、不思議に思ったのか、お母さんが話しかけてきました。
「いえ、もっと凄い火魔法を教えてくれるのかと思っただけです」
「凄いってどんな?」
「えっ?この辺り一面を焼き付くすとか?」
「…アイリはそんな凄い魔法を覚えて何がしたいの?」
「私は魔王を倒したいです!」
冒険の旅と言えば魔王討伐です!
「それはまた大きく出たわね…でも、お母さんは魔王を倒せるような凄い魔法は使えないわよ?」
「え?そうなんですか?」
「当たりでしょ。それに、そんな凄い魔法が使えるなら、とっくにお母さんが魔王を倒しに行ってるわよ!」
「…確かに…。」
「だから、お母さんは魔法の基礎を教えてあげるわ。凄い魔法はこれから冒険してレベルを上げながら覚えていけばいいじゃない。」
思わぬ所で冒険の許可が降りました、これはフラグですね!絶対に忘れないでくださいよ?
「そうですね、では基礎からよろしくお願いします!」
本で聞いた冒険者も最初は弱い魔法から徐々に強い魔法を覚えていました、最初から強かったら面白くないですしね。
でも、最近は最初から最強な主人公の物語も面白いと聞いたような?
…でも、どこで聞いたんでしたっけ?
「じゃぁ、最初は日常生活でも頻繁に使う着火の魔法から教えるわね。まず呪文は…。」
こうしてお母さんによる魔法の指導が夕方まで…。正確には、お母さんの魔力が尽きて、お母さんが倒れる寸前まで行われました。
が!!!
火魔法から始まり、水や土、風や光、そして回復魔法やアイテムボックスまで、イロイロな魔法を試してみましたが。私が、魔法を使えるようになる事はありませんでした。
「ごめんねアイリ、私の教え方が良くないみたい…。」
お母さんは、かなり落ち込んでいます、そしてかなり疲れているみたいです。明らかに魔力の使いすぎです。
「そんな事ないよ、たぶん私が悪いんだよ。」
とは言いますが、いったい何が悪いのかサッパリ分かりません…。
「おーい、夕飯の時間だぞ?」
と、庭までお父さんが呼びに来てくれました。
もうそんな時間なんですね。
「うん、わかった…。」
「なんだ?ダメだったのか?」
「うん…。」
「まぁ、そんなに落ち込む事はないさ。それに、世の中には魔法が使える人の方が少ないんだ、たとえ魔法が使えなくても気にする事はないさ。」
そうは言いますが、それでは、ダメなんです!
なんとしても明日には魔法を使えるようにならないといけないんです!
そして夕食
「「「いただきます」」」
今日の夕飯は5人です、リッカさんはどこに行ったのか帰って来ません。お父さんとお母さんは心配しているようですが、お兄さん達にその様子はありません。信頼されているのでしょうか?
「ごちそうさま…」
「アイリ?もういいのか?」
「うん、ちょっと自主連してくるね」
と、言い残し。私は再び庭で魔法の練習を始めました。
もう少しで総評価が100に…(チラチラ