出発の時
朝起きると体が重かった。ん?気分が暗いわけではない。物理的に重かった。徐々に意識がはっきりしてくるとその原因がわかった。
「んん~、孝介~」
あかりが抱きついていた。それも、若干俺の上に乗りながら。よくこんな体制で寝られるな。まぁ俺も気づかなかったが。
「あかり、起きろ。あ・か・り!」
「ん~ん。やだぁ~」
それなら、と思ってほっぺをつねると、
「い、痛いよぉ。起きる、起きるから!」
よし、起きたな。あとはベットからでて・・・。
「離してくれないか?」
「なんで~?だって起きろとは言われたけど離せとは言われてないよ?」
・・・屁理屈だ。ならばともう一度つねろうとすると
「同じ手にはのらないよ」
両腕をつかまれて体と一緒に抱きついて固定された。ご丁寧に足もからめて動かないようにされている。
「はぁ~」
「ほら~、せっかくの二人きりの朝なんだから楽しまなきゃ!」
「なに言ってんだよ」
と、この状態で顔をスリスリしたりされること30分
「もうそろそろいいか?てかもういいだろ!」
「ん!まだだーめ!」
さすがにそろそろ出たい。なので、
「そろそろやめないとあかりが可愛いからヤバいんだって。」
「えっ?」
よし、かかった!
一瞬固定が弱まったところで勢いをつけて回転する。それによってあかりの上に俺がくる状態になり、重力による固定がなくなるため、あとは簡単に脱出できる。
「うぅぅ。わざとやったよね・・・。」
「当たり前だろ。てか早く今日の予定たてないといけないんだからさ。」
「また一緒に寝てくれるならちゃんとやる。」
「・・・わかったよ。でも朝はちゃんと起きろよ。」
「うん!朝はちゃんとするね。」
まぁいいだろ。どうにかなるはず。「朝は」の「は」が少し気になるが。
「とりあえず、予定をたてよう。まず移動だが、あかりのスキルで簡単に行けると思う。だが、魔力的に休憩がいるから所々休んで今日中に半分ぐらい進む。そこにペック村ってのがあるから、そこで宿を借り・・・。あ、金がない。」
「あいにく私もお金持ってないね。」
お金を稼ぐには・・・。
(お金を稼ぐには魔物の討伐が手っ取り早いですね。)
あ、ヘルプさん。ん?なんかへんだな。よし、ヘルプだから名前はヘルにしよう。
(名前をつけていただけるなんて嬉しいです。)
ヘルにも感情はあるんだね。で、魔物の討伐だったね。
(はい。魔物はどの個体も魔石を持っています。強い魔物はその素材も売れますが。スライムやゴブリンといった弱い魔物は魔石ぐらいしか売れません。)
そうなのか。ならその辺から倒して行けばいいな。ありがとう、ヘル
(どういたしまして!)
「あかり、ヘルに確認したんだが」
「ヘル?」
「あ、あぁ。ヘルプだから名前はヘル。」
「そ、そうなんだ。で、どうしたの?」
「あぁ、魔物の魔石ってのが売れるらしい」
「そうなの!ならいっぱい倒さないとね!」
「お、おぅ」
なんか怖いな・・・。
「じゃあお金についても大丈夫だし。そろそろ行こうか」
「うん!」
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洞窟をでてから一時間。草原に出た。
「一つ思ったことがあるんだけどやってみるね」
「わかった」
よくゲームでは自分以外のキャラや敵もマップに表示される。あれをマップにつけたい。だが今のような地図ではやりづらいので頭の中で見たいときに見られるようにしたいな。自分は青にして仲間は水色 敵は赤 敵対していないものは緑 ボスは星型の赤にしとくか。ん~!
「よし!できた。」
「何をしたの?」
「自分以外の生物も表示されるマップを頭の中に見えるようにしたんだ。まだ人国しか表示できないけど、一度通ったところと地図を見たところは追加されるはずだ。」
「これで魔物も簡単に探せるね。」
「あぁ。早速反応があるな。行ってみるか。」
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草むらからのぞくと、そこにいたのはゴブリンだった。ゴブリン自体は強くはないのだが、それなりの知能があり仲間と連携をとって攻撃してくる。油断は禁物だ。
「三匹いるね」
「あぁ」
「私がやってみてもいい?」
「わかった」
するとあかりは剣を抜いた。ん?いやあれは剣ではないな。刀だ。素早く動けるあかりには最適だな。
「いくよ!」
それからは一瞬だった。正直見えなかった。
「よし!完了!」
「は、早かったな」
「でしょー、褒めて~」
「はいはい、えらいえらい。」
あれ、あかりってこんな性格だったか?まぁいいか。面白いし。
何てことをやってるとまたゴブリンが現れた。
「二匹か、次は俺がやってみてもいいか?」
「わかったけど、どうするの?」
「やってみたいことがあるんだよ」